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「なぜ日本が支援?」池上彰と考える、侵攻が続くウクライナと私たちのつながり

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月10日 11時0分

池上 そうか。ルーマニアやブルガリアはNATOに加盟しているから、ロシアが手を出せない。だからそこに入る前に攻撃するということなんですね。イーゴルさん、特にインフラが破壊されている現実には心が痛みますね。

イーゴル そうですね。そして「インフラが破壊された」「どこかにミサイルが落ちて民間施設が破壊された」と一言で言っても、それはただの施設や建物ではないのです。実家や、学校への通学路、子どもが生まれた病院など、私たちウクライナ人の思い出が詰まっている場所です。そのような場所が攻撃・破壊されると、精神的に自分を破壊されているような気持ちになります。

イェブトゥシュク・イーゴル(Ievtushuk Igor) NPO法人日本ウクライナ友好協会KRAIANY(クラヤヌィ)副理事長。ウクライナ西部のリュボムリ市生まれ、キーウ国立言語大学日本語学科卒業。2014年のロシア軍によるクリミア半島侵入時に、通訳として日本メディアの取材をサポート。2015年に来日し、筑波大学大学院修了(国際関係論)。IT企業に勤務しながら、日本からウクライナを支援するNPOの副理事長を務める

ウクライナの歴史や文化、アイデンティティを守るため

池上 まさに思い出まで破壊されてるということですね。ウクライナは言語で言うと、東部ではロシア語を話す人もいるし、西部ではハンガリー語を話す人もいる。言語でもモザイクのような国です。

イーゴル ウクライナ語は、ソ連の一部になったときも含めてこれまで何度も禁止されてきました。意図的にウクライナ人のアイデンティティを消そうとしていたんです。学術の世界や政府機関で勤めるにはロシア語を話せないとキャリアを立てることができず、その影響でウクライナ語を話す人が減っていきました。ウクライナ語を話すことが恥ずかしいという意識さえありました。それが、2013年のユーロ・マイダン革命で、がらっと国民の意識が変わりました。ウクライナの歴史やウクライナ語、アイデンティティを守るために努力しなければいけないと国民が目覚めたんです。

2013年にウクライナで起きた市民運動「ユーロ・マイダン」。親ロシア派の政権の崩壊と親欧米の政権設立につながった。「尊厳の革命」とも呼ばれる。写真は首都キーウの独立広場で市民がデモ活動を行う様子。イェブトゥシュク・イーゴルさん撮影

池上 この戦争は、ウクライナの文化をどう守るのか、ウクライナ人としてのアイデンティティを守る戦いでもあるんですね。

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