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「なぜ日本が支援?」池上彰と考える、侵攻が続くウクライナと私たちのつながり

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月10日 11時0分

イーゴル その通りです。その中で、特に食に興味の高い日本の人々にキーポイントとして強調しているのは、「ウクライナ料理といえば、ボルシチ」だということです。

池上 ボルシチはロシア料理ではない、ウクライナ料理だということですね。実は私も1990年代にキーウの有名な民族料理のレストランに行って、その時にボルシチはウクライナ料理なんだと知りました。

松永 レストランといえば、キーウのレストランのレベルはものすごく高いんです。実は、今キーウをはじめ他の市でも、レストランなどの店は普通に営業しています。もちろん空襲警報があれば避難しますが、ウクライナの人々には、この戦争の中でもできる限り普通の生活をして、ロシアの脅しに屈しないんだという強い意思が見えます。

イーゴル 日常生活の中では、生きているという感覚が持てるのです。今のミサイルがいつでも飛んでくるというのはあり得ない状況でとても危険です。ただそんな中でも、少しでも自分の精神状態を保つためにバリアを作っているのです。

松永 秀樹(まつなが・ひでき) JICAウクライナ事務所所長。海外経済協力基金(OECF)から国際協力銀行(JBIC)などを経てJICA。エジプト事務所長、世界銀行、中東・欧州部長を経て2024年1月から現職

将来が見えなくても、子どもたちの未来を築くために

池上 イーゴルさんは、今33歳だそうですね。例えばイーゴルさんが40歳になった時、あるいは50歳になった時、何をしているんだろうと思うことがありますか?

イーゴル この戦争で、未来を考えて計画を立てるということができなくなってしまいました。明日は何が起きるか分からないので、今目の前で起きている戦争を止めるために全力を尽くそうって。目の前のタスクをこなしていくだけになっています。多くのウクライナ人もそう話しています。

池上 ウクライナで日本語を学んで、それから日本に来て、将来やりたい夢をお持ちだったわけでしょう。戦争は、若い人たちの夢もまた奪うものだということですよね。

イーゴル そうですね。ただ、5年後、10年後の子どもたちの未来をつくる必要があります。前線に近い避難民用の施設を運営していますが、ショックなことにちゃんと読み書きできない子どもたちが出ています。コロナの影響で教育が受けられなくて、それでまた今回の侵略が始まって。

松永 子どもたちが教育の機会を逸してしまう。それは一生に影響を及ぼすことです。今、何百万人のウクライナの人々が国内外で避難していますが、それでも教育を受けることができるように、JICAは遠隔教育の機材を提供しています。将来復興の核になっていくのはウクライナの人々なので、特に子どもたちや若い人々に役に立つような支援を今後も続けていきたいと思っています。

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