貧困、肉体的・精神的虐待「児童婚の悪夢」...2000~18年の未成年の結婚は全米で約30万人
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月11日 11時38分
ビアラトによると、ニューヨーク州などでは、未成年者が離婚を申し立てようとしても、法律行為をする資格がないため認められない。親など保護者の同意があれば認められる州もあるが、そもそも未成年者に結婚を強いたのが親である場合、同意が得られないかもしれない。
それでも、離婚したい未成年者が助けを得る方法はたくさんあると、スウェッグマンは語る。
タヒリ・ジャスティス・センターやUALは、法的なサポートや社会的なサポートを提供してくれるし、未成年者が自分の権利を知る助けになる。
まずは学校のカウンセラーや、友達の家(その親が助けになってくれる場合)から、こうした団体に電話をかけたり、匿名のメールを送ったりするといいと、スウェッグマンは語る。
24時間体制の電話相談も児童婚の問題についての知識を付けつつあり、相談者を適切な支援団体につないでくれるようになったという。「難しい状況だが、助けてくれる人は必ずいる」とスウェッグマンは言う。
州法改正を阻むハードル
一番いい解決策は、結婚できる年齢を18歳以上、つまりアメリカにおける成人年齢に引き上げることだと、子供の権利活動家らは言う。ただ、アメリカでは結婚は州の管轄であるため、最低結婚年齢の引き上げも州ごとに実現していく必要がある。
「州法を改正すれば済む問題だ」と、ブラッドベリーは言う。「何かに莫大な投資をする必要はない。多くの場合、『親の同意があれば(未成年者でも結婚できる)』という一文を削除するだけでいい」
未成年者に結婚を強要することは児童虐待に当たるという定めがあれば、CPSも介入しやすくなるはずだ。
テキサス州の州法にはこうした定めがあるため、親族でなくても、裁判所に保護命令を申し立てて、児童婚を阻止することができる。こうした州法の改正が全米で起きるように、連邦政府が奨励策を取るべきだとスウェッグマンは言う。
児童婚を支持するロビー団体は存在しないし、州法の改正が一般市民から批判されたケースもほとんどない。それなのに州法の改正が広がらないのは、2つの大きなハードルのせいだと、リースは指摘する。
第1に、州議会議員は、投票権のない未成年者に恩恵をもたらす事案を優先的に扱う習慣がない。自分たちが重要だと考える問題に対処した後で、ようやく取りかかるのだ。
この問題の認知度が低いことも足かせになっている。ほとんどのアメリカ人は、多くの州で児童婚が合法であることすら知らない。未成年者の結婚というと、16歳の男女が恋に落ちて結婚する「ロマンチックなもの」と考える議員も少なくない。
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