貧困、肉体的・精神的虐待「児童婚の悪夢」...2000~18年の未成年の結婚は全米で約30万人
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月11日 11時38分
「児童婚にロマンチックな部分などひとかけらもない」とリースは言う。「これは人権侵害であり、未成年者が容易に抜け出すことのできない法的な罠だ」。リースの率いるUALは、30年までに全米50州で児童婚が禁止されることを目指している。
児童婚の禁止が進まないもう1つの理由は、児童婚が望まない妊娠の解決策とされてきたこと、そして一部の宗教団体が児童婚の禁止を望まないことだと、ビアラトは言う。
リベラルな活動で知られる米自由人権協会(ACLU)や米家族計画連盟も、児童婚を禁止する州法案に反対している。ACLUはNBCニュースで、結婚年齢を18歳以上に引き上げるカリフォルニア州法案は、「十分な理由もなく、結婚という基本的権利を不必要かつ不当に侵害するもの」だとの見解を示した。
米家族計画連盟カリフォルニア支部の広報担当者は昨年、「われわれはあらゆる虐待から若者を守ることを支持する」が、その保護は「未成年者の生殖に関する権利と、自らの健康と人生に最善の選択をする能力を妨げるべきではない」と、ロサンゼルス・タイムズ紙に語っている。
配偶者ビザという盲点
ワイオミング州の議会共和党は昨年、児童婚禁止法案は、「結婚の基本的な目的を否定するもの」だとして反対を表明した。「16歳以下でも妊娠・出産できる以上、生まれてくる子供のために結婚の道が開かれていなければならない」というのだ。
児童婚の根絶を目指す運動が「猛烈な勢いで広がる」一方で、一部の州が児童婚の拠点になる恐れがあると、ブラッドベリーは語る。
児童婚禁止法案が塩漬けになっている州もある。「コネティカット州議会は、法案を審議にかけることさえしなかった。だから私は下院議長の駐車場に陣取って抗議した」と、ブラッドベリーは振り返る。するとその日のうちに法案は採決にかけられ、全会一致で可決されたという。
移民制度との関係で、児童婚が悪用されるケースもある。アメリカの移民法では、配偶者ビザの申請者や受益者(配偶者)に年齢制限を設けていないため、未成年者が外国に住む「配偶者」のためにビザを申請したり、成人が外国に住む未成年の配偶者のビザを申請できるのだ。
ビアラトによると、米市民権・移民局(USCIS)は、07年からの10年間に、こうした配偶者ビザ申請を8686件受理しており、カップルの一方が未成年でも、配偶者ビザが発給されてきたという。71歳のアメリカ人が17歳の配偶者のビザを申請したケースもあるという。
USCISのガイドラインには児童婚に関する規定がない。だからこそ州のアクションが重要になると、リースは強調する。
「このままでは少女たちがこの種の人身売買の餌食になる恐れがある」と、リースは言う。「州はそのような事態を許すか、結婚年齢を18歳に引き上げる正しい措置を取るか選択を迫られている」
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