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組み立てが大変なイケアの家具は満足度が高く、時短になる簡単ケーキミックスは売れなかった理由

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月23日 11時30分

イケアの家具に対して抱いた感覚

だが、購入した平箱包装式のイケア家具が、組み立てにあれほど膨大な時間と労力が必要だということは、まったくの予想外だった。

イケアが、地球上のありとあらゆる言語に対応しなくてすむようにしたと思われる図とイラストしかない組み立て説明書に、自分がどれほど面食らったかいまだに覚えている。

何もかもが、つじつまが合わないように思えた。種類ごとのネジの見分けもつかなければ、部品のいくつかは足りていないようだった。

イケアの家具を組み立てたことがある人ならわかってもらえると思うが、パーツをうっかり逆さまに組み立てて、ずっとあとになって間違いに気づいて目の前が真っ暗になるという事態が、いとも簡単に起きてしまうことを私も身をもって学んだ。

そうして、何段階か前の間違いを直すために、ここまでせっかく組み立てた作品を解体するという作業に、さらに多くの時間を費やすはめになった。

このチェストの組み立てが楽しかったとは、とてもいえない。

ところが、ようやく作業が完了すると、私のなかで不思議なことが起きた。

自分の仕事ぶりに対して、とてつもない満足感を覚えたのだ。

自宅には、もっと値段が高くてはるかに高級なつくりの家具がいくつもあるにもかかわらず、自分がそれらの家具よりも子どもたちのイケアのチェストを、より一層愛着を込めてしょっちゅう眺めていることに気づいた。

そういった意味では、私は典型的な不合理人間だ。

研究仲間のマイケル・ノートン教授(ハーバード大学経営大学院)、ダニエル・モション教授(テュレーン大学経営大学院)とともに調べた結果、私がイケアの家具に対して抱いた感覚は、実は多くの人々に共通するものであり、しかもとても強力なものであることが判明した。

そうして、私たちはこの発見を「イケア効果」と命名した。

ケーキミックスのパラドックス

今日では、イケアが「商品を購入すること」と「自分でつくること」を結びつける場となっている。だが「自分で組み立てる」というコンセプトは、決して新しいものではない。

外に働きに出る女性がまだ少なかった1940年代当時、P・ダフ&サンズ(ダフ社)というアメリカのある企業が、焼き菓子の材料業界に一大革命を起こした。

そのイノベーションとは、箱入りのケーキミックスだった。

これを使えば主婦は毎回、卵、砂糖、小麦粉を量る代わりに、ミックスの粉に水を加えて混ぜるだけですむようになる。そして180℃のオーブンに30分入れておけば、ケーキが焼ける。

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