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農耕開始から国家誕生までの4000年に何があったのか...デヴィッド・グレーバーの遺作『万物の黎明』の自然科学研究への影響

ニューズウィーク日本版 / 2024年8月7日 10時30分

小埜 集団の定住、巨大化に伴う社会階層化、そしてその構造維持には農業に加え、宗教も深く関わっていると思います(3)。そして遂にはブルシット・ジョブを生み出すに至った現代社会を脱出不能の「万物の薄暮」としてではなく、そうではない社会のありようを考えていく時期にきています。

自然科学に携わる私たちに大いなる刺激と勇気を与えてくれた『万物の黎明』は、サイバースペース内でエッセンス化された情報がすさまじいスピードで大量消費されている現代の社会人にこそ読んでほしいと思います。本書が無批判に受け容れられている「神話」を再考するきっかけになることを願っています。手に取ると怖気付いてしまう質量が難点ですが、読む価値はあると思います。

また、本文中には青森の三内丸山遺跡や任天堂の「ゼルダの伝説」といった日本の事例が出てくることも最後に申し添えて、この対談を終えたいと思います。本日は、ありがとうございました。

【参考文献】
(1)『ワンダフル・ライフ──バージェス頁岩と生物進化の物語』(著) スティーヴン J.グールド(2000) 早川書房
(2)『生命の歴史は繰り返すのか?──進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む』(著)ジョナサン B.ロソス(2019)化学同人
(3)『宗教の起源──私たちにはなぜ<神>が必要だったのか』(著)ロビン・ダンバー(2023)白揚舎

小埜栄一郎(Eiichiro Ono)
1974年生まれ。岡山大学農学部卒業。奈良先端科学術大学院大学バイオサイエンス研究科分子生物学専攻博士前期課程修了。博士(バイオサイエンス)。2000年サントリー株式会社に入社、現在、サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社主幹研究員、静岡大学客員教授、科学技術振興機構さきがけ領域アドバイザー(植物分子の機能と制御)、ソムリエ(J.S.A)。専門は酵母と植物のゲノムとメタボリズム研究。趣味は植物観察と雑魚獲り。

松田史生(Fumio Matsuda)
1974年生まれ。2002年京都大学農学研究科応用生命科学専攻博士課程を修了、学位を取得後は、日本学術振興会特別研究員、ポスドク、理化学研究所植物科学研究センター研究員、神戸大学自然科学系先端融合研究環重点研究部准教授、大阪大学大学院情報科学研究科バイオ情報工学専攻准教授を経て、2018年より同教授。専門は代謝工学。趣味はバイクと釣り。

『万物の黎明』
 デヴィッド・グレーバー /デヴィッド・ウェングロウ [著]
 酒井隆史 [訳]
 光文社[刊]

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