一般人から見れば「どちらも敵、貴族と僧侶の戦い」にしか見えない、アカデミズムとジャーナリズムの対立
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月28日 11時0分
しかし、その後、生成AIやSNSに私たちの「臨床知」が乗っ取られるという全く別の軸が出てきました。ですから今回は、95号の鼎談の続編として「臨床知でテクノロジーを飼いならす」を書き、テクノロジーを活用した執筆や調査(取材)において、臨床知で専門知を乗り越える有効性を今一度考え直すことで、その接点を改めて浮かび上がらせることを試みました。
田所 『アステイオン』が創刊された1986年には、まだ生まれていない世代も増えています。その代表としてトイアンナさんには、この38年を逆投射して、創刊時期の数号を読んでもらった読後感を執筆いただきました。今回、改めてどのような印象を持ちましたでしょうか。
トイアンナ 普通の会社員から物書きになったライターの立場から言うと、一般人にとってはアカデミズムもジャーナリズムも同類で、どちらも「敵扱い」です。たとえるなら、それは僧侶と貴族の対立を見ていた、中世ヨーロッパ時代における農民と同じです。
現在では修士号を持つジャーナリストも増えているので、ジャーナリストとアカデミアは非常に近い存在に見えます。ですから、アカデミズムとジャーナリズムの対立軸を前提とする『アステイオン』の立ち位置には、逆に驚かされました。
田所 なるほど、さながら僧侶と貴族の対立を見る農民といったところでしょうかね(笑)。それはアカデミアとジャーナリズム側では見落とされがちな視点ですね。では、トイアンナさんの読者が多くいるSNSの世界はいかがでしょうか?
トイアンナ 現在、第3の軸としてnoteのような有料・クローズドなブログサービスの影響力が増しています。殺伐としていると言われるSNSですが、実は有料会員はとてもマナーがよく、そこでは生産的な議論が行われています。
田所 そうなると『アステイオン』のような紙の論壇誌の意義について、どう思われますか?
トイアンナ 僧侶と貴族の対立を見ている一般人からすれば、論壇誌の執筆陣は「石を投げたくなる相手」かもしれません。しかし、オープンな議論の場として生き残ってきた『アステイオン』の存在意義は今でも大きいと思っています。
田所 専門家ではないけれど「専門知」に触れたい、知的関心を持つ中間層は必ずいます。そういった読者層を意識して私たちは『アステイオン』を作ってきました。マスマーケットを最初から意識していないという側面ですね。いずれにせよ、論壇誌をめぐる状況は厳しさを増しているのは事実です。
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