イスラエル・ヒズボラの交戦激化、第2局面でイランはどう出る?
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月3日 14時20分
イアン・パーミター(オーストラリア国立大学アラブ・イスラム研究センター研究員)
<司令官暗殺への報復でヒズボラがロケット弾攻撃、双方が成果を主張するなか、イランはどう動く?>
イスラエルは何週間にもわたり、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラからの大規模攻撃に備えていた。7月30日にイスラエルがヒズボラのフアド・シュクル司令官を殺害したためだ。
8月25日についに攻撃が実施されたが、イスラエル側は準備万端だったらしく、大規模攻撃を阻止したと主張。だがヒズボラ側も、攻撃に成功したという声明を発表した。
両者の応酬をどう解釈すべきか。今後、中東情勢はどう動くのか。
現時点でイスラエルと、イランが支援するヒズボラは新たな行動は起こしていない。ヒズボラ側は、今回の攻撃はシュクル暗殺への報復の第1段階にすぎないとし、作戦の成果を評価して再攻撃を仕掛ける可能性もあるとしている。
一方のイスラエルは、ヒズボラが約1000発のロケット弾を使って越境攻撃を行う準備を進めているのを察知したため、約100機の爆撃機でレバノン南部に先制攻撃を行い、ロケット発射機を含む270カ所の標的を攻撃したと主張した。
ただし全面戦争に突入すれば、ヒズボラは1日に3000発のミサイル攻撃を実行できるとみられている。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、先制攻撃の成功を明言する一方、これで終わりではなく、必要ならさらに攻撃を行うと語った。
これに対してヒズボラ側は、攻撃されたのは「人けのない峡谷」で、大きな損害はないと主張。同時に、イスラエル北部に多数のカチューシャ・ロケットを発射して報復した。
カチューシャはヒズボラが保有する中で最大の威力を持つロケット砲ではなく、最大射程は40キロ程度のため、イスラエルの北部しか攻撃できない。ヒズボラ側は、カチューシャによる攻撃は無人機攻撃の前哨戦だとしている。
一方、ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララは8月25日の演説で、レバノン国民をこうした状況に巻き込んだことを謝罪する姿勢も見せた。ヒズボラは政治・軍事組織であり、レバノンの国政選挙で票を獲得し続けなければならない。こうした配慮を示すのも、ある意味では当然だ。
ナスララは目的を達成したと表明し、ヒズボラはイスラエルとの国境付近から避難したレバノン人に帰還を呼びかけた。だが今後の展開はまだ不透明なので、早すぎる判断だったかもしれない。
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