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パリ五輪の開会式めぐる「お門違いの大炎上」は、なぜ起こったのか?...答えはキリスト教の歴史の中に

ニューズウィーク日本版 / 2024年9月3日 16時9分

ローマの「都市祭祀」は地域社会の儀礼中心で、個々の信者には精神的意味がほとんどなかった。一方「密儀宗教」は精神的意味を与え、個人が神と直接つながることを可能にした。これらの密儀宗教は信者に神と結び付いていると感じさせ、永遠の命を授かる希望を与えた。

キリスト教はユダヤ教の新たな一派から救世主像を取り入れた。他の密儀宗教は古代ギリシャのディオニュソスをヒントに救世主像をつくり上げた。

ディオニュソスはしばしば「ぶどう酒と演劇の神」と評される。ローマ神話のバッカスと共に放蕩、酩酊、放縦と結び付けられる。

その後、キリスト教は禁欲を奨励する道徳観を採用したため、キリストとディオニュソスを比較することにキリスト教徒が気分を害したりショックを受けたりするのもうなずける。だがディオニュソスに関する表面的な理解の下には、はるかに複雑な構図が隠れている。

The interpretation of the Greek God Dionysus makes us aware of the absurdity of violence between human beings. #Paris2024 #OpeningCeremony pic.twitter.com/FBlQNNUmvV— The Olympic Games (@Olympics) July 26, 2024

ディオニュソスはぶどう酒だけでなく、社会の片隅、そして重要なことに自然の片隅に身を置くことで得られる悟りとも結び付けられる。

人間の処女を母に、神を父に持つ(どこかで聞いたような話だ)ディオニュソスは、女神の怒りに触れて焼死した母親の胎内から嬰児の状態で取り出され、臨月を迎えるまで父親であるゼウスの両腿の間で育てられた。

誕生後は異郷で育ち、成人して小アジアから再びギリシャに戻った当初は神と認められなかった。

古代ギリシャの悲劇詩人エウリピデスの『バッコスの信女』(紀元前405年)では、テーバイ王ペンテウスはディオニュソスを拒むが、年老いたテーバイ市民たちはディオニュソスの儀式が行われている田園地帯に逃げる。

やがてディオニュソスは転生をつかさどり、不死を約束する神として知られるようになった。

その意味で、ディオニュソスの饗宴は結び付きと境界の撤廃をも象徴している。ディオニュソスとキリストの宗教と教会はどちらも信者が生と死、力と権力、人間と神の間の領域に意味を見いだすことを奨励した。

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