リーダーの「自己防衛」が、チームの崩壊を招くリスクに...いま職場でチームレジリエンスが必須な理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月14日 15時52分
「リセットするか、頑なに遂行するか?」、二択から脱却する「訂正の力」
──チームレジリエンスを高めるためにおすすめの書籍は何ですか。
池田 チームレジリエンスを発揮するためには、リーダーがファシリテーションの力を身につけ、多様なメンバーの意見を引き出す必要があります。そこでおすすめなのが、安斎さんの著書『問いかけの作法』。困難を乗り越えた後にうまく振り返るための「問いかけ」や「ファシリテーション」を学べる一冊です。
またメンバーのエンパワーメントに困っている方には、全員でリーダーシップを発揮していく「シェアド・リーダーシップ」の重要性と、その実現方法を解説した『リーダーシップ・シフト』がおすすめです。
安斎 東浩紀さんの『訂正する力』は、チームレジリエンスを発揮するうえで、困難をどう再解釈するかが学べるおすすめの本です。日本人は一般的に、戦略がうまくいかなくなると、全部リセットするか、頑なに遂行するかの二択に陥りがち。そこでこの本は、蓄積されてきた過去を「再解釈」し、その良さを現在に活かすための哲学が必要だと説きます。
この考え方は、僕が大企業の商品開発やイノベーションのプロジェクトに携わる際に大事にしている点とも共通しています、参加者のアイスブレイクでは、「まずはこれまでのボツネタを出そう」と呼びかけるんです。「これは通らないだろうな」というボツネタを、壁に大量に貼っておく。すると、プロジェクトが進むにつれ、議論の文脈を共有したうえで、そのボツネタが活きる場面が出てきます。
本当はやりたかったけれど我慢していた案を、「熱量の資源」として共有し、保存しておく。すると過去のボツネタも、いつでも訂正して、再解釈できると思えるようになるのです。
また、自著ですが『パラドックス思考』は、『チームレジリエンス』とセットで読んでいただきたい一冊です。リーダーは数多くの矛盾に直面しますが、白黒はっきりつけようとせず、柔軟に対処することが必要になってくる。そうした矛盾から新しい道を探るプロセスを学ぶうえで役立てていただけたら嬉しいです。
最後に、二人からのおすすめが、中原翔さんの『組織不正はいつも正しい』です。組織不正を行わない方が得策なのに、組織不正に手を染めてしまう企業が少なくないのはなぜなのか。経営学者の著者は、燃費不正、不正会計などの事例をもとに、組織をめぐる「正しさ」について考察しています。
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