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人を仮死状態にする薬をAIで探したら、認知症治療薬がヒット...なぜ「ドネぺジル」は冬眠の代わりになり得るのか?

ニューズウィーク日本版 / 2024年9月9日 13時40分

ドネペジルは、アメリカでは1996年、日本では99年からアルツハイマー型認知症の進行抑制剤として承認されています。SNC80とは異なりすでに医療の現場で使用されている薬であるため、代謝を抑制する効能が認められれば、緊急時に病院に搬送される間に起こる臓器損傷を防ぐ目的で利用される日も遠くないかもしれません。

研究論文の筆頭著者であるマリア・プラザ・オリバー博士は、ハーバード大のプレスリリースの中で「興味深いことに、アルツハイマー病の患者におけるドネペジルの臨床的過剰摂取は、眠気や心拍数の低下、つまり無気力のような症状と関連しています。私たちの研究は、これらの効果を副作用としてではなく、主な臨床反応として活用することに焦点を当てた初の研究です」と説明しています。

さらに、研究チームは薬剤の毒性に配慮し、ドネペジルを脂質ナノ粒子のカプセルに入れることを提案しています。実験では、カプセルに入れたものと入れないものでは、双方とも運動性の低下、心拍数の低下、酸素消費量の減少が観察され、ドネペジルで「冬眠状態」になったことが確認できました。

しかし、カプセルに入れない場合は、投与後 2~3 時間以上経過すると毒性が現れ、死亡するものや形態学的変化が見られるものも現れました。さらに、カプセルに入れたドネペジルを使用したほうが、誘発する薬剤の能力が大幅に向上し、同時に毒性が大幅に低下することが分かりました。

論文の責任著者であるドナルド・E・イングバー博士は「ドネペジルは数十年にわたって世界中の患者に使用されてきたため、その特性と製造方法は十分に確立されています。私たちが使用したものと類似した脂質ナノキャリアも、現在では他の用途での臨床使用が承認されています。この研究は、カプセル化された薬剤が将来、患者が壊滅的な傷害や病気から生き延びるための重要な時間を稼ぐために使用される可能性があり、新薬よりもはるかに短い時間で簡単に処方および大量生産できることを示しています」と語っています。

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ドネペジル・カプセルが実用化したら、緊急医療の現場では搬送前にまず「治療の時間稼ぎ」のためにこの薬を投与することが当たり前になるかもしれません。さらに、非侵襲的なため訓練されてない人でも治療を施せることから、将来的には施設や学校にはAEDとともにドネペジル・カプセルも設置される可能性もあるかもしれません。

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