「この選択は人生の冒険」洪水リスクにさらされる荒川河川敷のホームレスたち
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月11日 10時55分
「貧乏人の冒険は金持ちの探検とは比べものにならない。貧乏人は生活範囲が狭く、条件が整っていないため、何をするにも慎重に行動し、自分の力に見合った範囲で行わなければならない。しかし金持ちは飛行機や船、高価な通信設備を持っている。行きたい場所に自由に行き、思いのままに振る舞うことができる。
私は前者として、自分の持っている条件に基づいて、できることをするしかない。冒険もそうだ。しかし私の冒険では、金持ちには絶対に得られないものを手に入れられることもある。例えば、私たちが知り合えたことは冒険の成果だ。
あなたはあの日、岸から離れ、水がなくて弱っていたカメを拾い、川に返してやりたいと思った。一番近い道として私の家を通らなければならず、私は微笑んであなたに『どうぞ』と言った。あなたは私が親切だと思って、戻ってくると私と話をして、最終的に私たちは友達になった。冒険が私たちの縁を繋げたのだ。
このように、人は誰でも、他の人に対して親切にすると、友好的な贈り物が返ってくる。あの時、私があなたを通さなかったら、あなたは別の道を探して川に行き、戻ってきて私に話しかけてくることはない。あなたは私と通行人のようにすれ違っただけだっただろう。荒川の川辺での私たちの出会い、そして私たちが友達になって得た喜びは、お金持ちには体験できない」
左:台風が襲来する中、防災について相談する桂さんと斉藤さん(仮名)/右:桂さんはまず自分の高級自転車を安全な場所に移動させる
助け合い人生を切り開く、そんな風潮がなくなった
桂さんと斉藤さん(仮名)の付き合いには、称賛すべき良い話がある。
2年前のある日、桂さんは荒川を上流に2~3キロ行った戸田橋まで、ホームレスの友人に会いに行き、そこで斉藤さんと知り合った。斉藤さんは当時、戸田橋の下でダンボール箱で生活していた。
桂さんはそれがあまりにも安全ではないと思い、斉藤さんにこう言った。「私の住む新荒川大橋のほうに引っ越してきてください。丈夫なテント小屋を建ててあげるから」
数日後、斉藤さんは本当に引っ越してきて、桂さんが建てた新しい家に住み始めたのだ。その後、彼らは兄弟のように親しくなった。
桂さんはこう話す。
「私が子供の頃は、何か困ったことがあれば、近所の人同士で助け合った。今はそんな風潮がなくなった。だから、今の若者にはもっと冒険が必要だ」
生活の中で勇敢に冒険し、冒険の中で懸命に生を求め、生を求める中で和やかに助け合い、共に助け合いながら新たな人生を切り開く!
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