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「この選択は人生の冒険」洪水リスクにさらされる荒川河川敷のホームレスたち

ニューズウィーク日本版 / 2024年9月11日 10時55分

人生はこうあるべきだ。桂さんは、まさにそれをやり遂げている。

桂さんと話をするだけで、私はいつも学びを得ていることに気づいた。

前に一緒に食事をしたとき、今の日本人は以前ほど礼儀正しくない、と私が愚痴をこぼしたことがある。ランニングをするとき、向こうから走ってきた人に私は挨拶をするのだが、いつも相手にしてくれない人がいる。どうして?

桂さんはこのように話した。

「人は走るとき、呼吸とペースを整えることに集中しなければなりません。この状態では、他のものに邪魔されたくないものです。それが相手があなたに返事しない理由かもしれない。お互いがただ散歩しているときだったら、挨拶をすれば、きっと返事をしてくれますよ」

ありがとう桂さん! また一つ勉強になりました。

新荒川大橋の近くにある鉄道橋の下で、救助隊員が救助訓練を行っていた

死にやすい橋を選ぶより、生きにくい道に戻ってほしい

ところで、荒川に掛かる新荒川大橋について、桂さんは私に、外国人にはあまり知られていない話を教えてくれた。

私たちの目の前にそびえる雄大な橋は、実は自殺者の多い場所でもある。橋は高く、水も深い(橋の中央の川の水は少なくとも10メートルの深さがある)ため、石を体に縛って飛び降りれば、すぐに姿を消すことができるという。助けようと思っても難しく、とても「死にやすい」場所なのだろう。

私は何度もこの橋の上を通ったことがあるが、橋を渡る人は皆、慌ただしく行ったり来たりしている。私だけがぼんやりとキョロキョロしていて、時々立ち止まって写真を撮ったりしていた。

聞いたところによると、お節介好きなドライバーは車で橋の中央を通る際、窓の外で誰かがうろうろしているのを見つけたら、警察に通報することがあるそうだ。

思い詰めて新荒川大橋で命を絶とうとする人に、私は言いたい、死にやすい橋を選ぶより、生きにくい道に戻ってきてほしい。人は死んだら二度と生き返らないが、生きている限り、火を浴びて生き返る(中国語で「浴火重生」という)、つまり逆境から立ち直り、再び輝くことができるのだから。

桂さんが10年前にホームレスになったのは一つの冒険だったと言ったが、考えてみれば、私が今ホームレスの問題を取り上げるのも一種の冒険ではないか。

私たちの骨の中には冒険精神が宿っており、血統の中にも遠方の少数民族の遺伝子が含まれているのかもしれない。

私たちは3人とも鼻筋が高い(左から、桂さん、筆者、斎藤さん)

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