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ベテラン書籍ライターが「本を出したい」なら「100の格言」を書けばいいという理由【出版業界】

ニューズウィーク日本版 / 2024年9月26日 17時55分

この『ずるい仕事術』の中に「ブランド力を持つためには、自分らしくない仕事をしてはいけない」という内容が書かれた項があります。これだけならば、「うん、まあそれはそうでしょうね」と思うだけでしょう。きっとそれほど読者の心には残らないと思います。

しかし佐久間さんは、このことを「ケーキ屋ならとんかつを出してはいけない」という言葉で表しています。実にわかりやすい表現です。これが、「強い言葉を持っている」の意味です。別の言葉でいえば「モノは言いよう」です。

これ以外にも「コミュニケーションは、最短距離よりも平らな道」「かわいい後輩よりも、頼れる若手になれ」「自分は勇者なのか、僧侶なのか」といった、佐久間さんならではの印象的な言葉が並びます。

ちなみに、佐久間さんが「ケーキ屋ならとんかつを出してはいけない」と表現した内容を、作詞家の秋元康さんは「記憶に残る幕の内弁当はない」と表現しています。これもまたパワーワードですね。

読者の行動を変えるのは「強い言葉」

佐久間さんや秋元さんのように「強い言葉」で書かれた文章は、読者にとって忘れられない文章になります。「そうか、何でもかんでもそつなくできることよりも、自分ならではの特技を持っていることが大事なんだな」と腹落ちさせることができます。

これが、読者にとっては「よい読書体験」になり、「読んでよかった」という読後感につながり、「明日から意識しよう」という行動変容につながります。そういった読書体験ができる書籍は売れていきます。

これは、ビジネス書だけの話ではありません。売れっ子の著者さんには、必ずこの、「強い言葉」がある。ミリオンセラーを世に出したある編集者さんは「著者になる資格があるかどうかは、オリジナルの言葉を持っているかどうか」だと、教えてくれました。

私の格言を100本書き出してみる

この「強い言葉」について、もう少し考えてみます。「強い言葉」とは、「名言」であり、「格言」であるとも言えます。

私が著者になるための出版ゼミに通っていたときのことです。32名の受講生が、自分が出したい本の最終プレゼンを終え、懇親会で盛り上がっているときのことでした。

そのゼミを主催していた当時の編集長が、ぽろっと、「書籍を書くときには、伝えたいことを、格言にする気持ちで書くといいですよ。100本くらい格言があったら、それを見出しにして原稿が書けます」と言いました。

その日はゼミを卒業した嬉しさで、浴びるほどお酒を飲んでいたのですが、編集長の言葉が気になって、家に帰ってから朝までかけて格言を考えてみました。
このとき私は女性向けのヘアカタログをつくる仕事を15年していて、髪についての書籍の企画を考えていたので、つくった格言はこんなものでした。

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