深圳日本人学校の男児殺害に日本はもっと怒るべきだ
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月20日 15時58分
日中のネット空間は時間差なくつながっており、「反日感情を煽って自国民を団結させる」という手法が、もはや限界に近づいているのではないか。
1週間で忘れてしまう
振り返ってみれば、2012年の尖閣国有化の頃のほうが、中国人の反日感情は今より苛烈だったと言える。それでも日本人に対して身体的な攻撃がほとんど起きなかったのは、中国経済が順調に成長しており、日本もそれに乗っかる形で緊密な関係を築いていたからだろう。どんなに憎くても、商売相手ではあったわけだ。
今や中国経済は深刻な低迷状態にあり、日本企業はどんどん手を引き始めている。金の切れ目が縁の切れ目というべきか、日本と中国はお互いに「関わっても得をしない相手」になってしまった。経済的な互恵関係が縮小したことで、日本への憎悪が純化していったのではないだろうか。
6月に蘇州の日本人学校で日本人母子が襲撃されたあと、バスの案内係をしていた胡友平さんが児童をかばって亡くなったと伝えられた。
極めて深刻な事件だったにも関わらず、日本の世論は数日で急速に沈静化し、10日も経たないうちに、ほとんど話題にならなくなった。日頃、中国に対して厳しい姿勢を取っている保守層やネット右翼と呼ばれる人たちですら、何の反応も示さなくなった。日本社会があまりにも淡白であることに、私は驚きすら覚えた。
「日本人は忘れっぽい」とよく言われる。これから新たな事実が出てこない限り、今回の事件に関するニュースの出稿量は日に日に減り、やがて人々の意識にのぼらなくなっていくだろう。赤の他人が死んだことなど、すぐにどうでもよくなってしまうのだ。
1週間後には自民党総裁選が行われ、新聞もテレビもSNSのタイムラインも、次の首相に関する話題で埋め尽くされることになる。兵庫県の斎藤元彦知事の動きや大谷翔平の偉業にも、注目が集まっている。
恐らく、今回も動機の解明すらなされないまま、時間が経って人々の脳裏から記憶が薄れ、ウヤムヤにされていくことになるのだろう。中国政府は、それを狙っている。蘇州の事件がそうであったように。
日中関係の行く末は、この記事を読んでいるあなたと私が1週間後、事件のことを覚えているかどうかにかかっている。でも、あまり期待はしていない。
この記事に関連するニュース
-
子供を殺された父親の「手紙」は日中友好につながるか?
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月9日 16時40分
-
中国「愛国ビジネス」暴走、日本人襲撃...中国政府は止められないのか
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月23日 11時0分
-
「悲劇を繰り返すな」、日本人男児殺害事件の再発防止を訴える―シンガポールメディア
Record China / 2024年9月22日 7時0分
-
深圳男児死亡事件「暴漢から身を守る」唯一の方法 「安全神話」が揺らいだ中国以外でも警戒が必要
東洋経済オンライン / 2024年9月21日 10時30分
-
日本人男児死亡、在日中国人は憤慨、中国メディアは沈黙―独メディア
Record China / 2024年9月20日 13時0分
ランキング
-
1ネタニヤフ氏私邸狙いドローン=ヒズボラ発射か―イスラエル
時事通信 / 2024年10月19日 20時51分
-
2「ガザはこの世の地獄」毎日子ども40人殺害 国連
AFPBB News / 2024年10月19日 17時2分
-
3初のG7国防相会合、ガザでの即時停戦要求…国連レバノン暫定軍への支援も盛り込み共同声明採択
読売新聞 / 2024年10月20日 0時29分
-
4ロシアに派遣された「北朝鮮兵」の動画、ウクライナ当局が公開「露は捨て駒として使うつもりだ」
読売新聞 / 2024年10月19日 20時48分
-
5北朝鮮派兵なら「戦闘拡大」=ウクライナで会見―仏外相
時事通信 / 2024年10月19日 22時1分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください