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戦火の拡大は「抵抗の枢軸」を狙うハマスの思うつぼ...中東全域が全面戦争の勃発前夜のような不穏な空気に

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月1日 16時26分

ハマスはイスラエルが最大級の報復攻撃を行うことを先読みし、それに怒った中東各地の武装組織が「打倒イスラエル」の旗の下、一丸となることを狙っていた。

ナスララはこの1年近くイスラエル北部への攻撃をやめる唯一の条件として、イスラエルがハマスと停戦合意に達することを挙げてきた。だがイスラエルはそれとは逆の方向に突き進んだ。

イスラエルのヨアブ・ガラント国防相は、ヒズボラに対する今回の攻撃でイスラム武装組織との戦いは「新たな段階」に入ったと述べ、戦闘の「重心」を北に、つまりレバノンに移す考えを明らかにした。

イスラエル政府はまた、ヒズボラの攻撃で家を追われた北部の住民が安全に帰還できることを、この戦争の新たな目標として追加した。

ヒズボラの通信機器を標的にした攻撃とアキル殺害は、イスラエルがこの危険なゲームのルールを変えようとしていることを物語る。イスラエルはヒズボラに圧力をかけて譲歩させる道を選んだのだ。

強硬な姿勢を一切崩さないイスラエルのネタニヤフ首相(写真)とヒズボラの指導者ナスララによって、イスラエルとレバノンの一般市民は大きな犠牲を強いられている ABIR SULTANーPOOLーREUTERS

ナスララは19日、ポケベル爆発事件後で初となるテレビ演説を行い、ヒズボラは大きな打撃を被ったが、イスラエルに屈するつもりはないこと、そしてハマス支持の方針に変わりがないことを強調した。

なかでも注目されるのは、今回の事件を、イスラエルが「何十年にもわたりやってきた虐殺」の最新の事例と位置付けたことだ。かねてからレバノン人とパレスチナ人の間では、「イスラエルは定期的に無実の市民を虐殺する犯罪組織」という認識が定着している。

今回の事件もその1つだと定義したわけだ。

ナスララはまた、イスラエルの行動は「あらゆるレッドラインを越え」ており、宣戦布告に近いと述べ、「報復はなされる」と明言。その一方で、「問題はいつ、どの程度の規模か」だとして、全面戦争は避けたい本音をにおわせた。

これに対して、イスラエルはさほど慎重な姿勢を示していない。昨年10月にハマスの奇襲攻撃を受けて以来、ヒズボラとの緊張は封じ込めてきたが、ここへきて、ひょっとすると手に負えなくなるかもしれないエスカレーションに手をかけているようだ。

イスラエルが今回のポケベル爆発事件を、どのような戦略で行ったのか見極めるのは難しい。

今回のガザ戦争が始まった時から、イスラエルの政治目標は不透明で、戦略も一貫性を欠いてきた。ベンヤミン・ネタニヤフ首相の最大の関心事は、自らの政治生命と権力の維持であり、それを国家の利益と結び付けているのだと、批判派は指摘する。

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