戦火の拡大は「抵抗の枢軸」を狙うハマスの思うつぼ...中東全域が全面戦争の勃発前夜のような不穏な空気に
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月1日 16時26分
それはヒズボラの対応にどのような影響を与えるのか。
「抵抗の枢軸」結束が狙い
大きなダメージを受けたから、ヒズボラが活動を縮小したり、イスラエルへの越境攻撃をやめたり、イスラエルとの国境地帯から撤退したりするとは考えにくい。
そうはいっても、通信システムに大打撃を受け、指導部の大部分が欠けたヒズボラが、イスラエルに対して全面戦争を始めるのはあまりにもリスクが高い。
そんなことになれば、ヒズボラも、レバノンも、場合によってはイランも、大きな代償を払う恐れがあることは、ナスララもイラン指導部も承知している。
ある意味で、ネタニヤフの指導下にあるイスラエルの人々と、ヒズボラの大きな影響下にあるレバノンの人々は、誰かの利益のために自分たちの暮らしが脅かされるという、似たような境遇にある。
ネタニヤフは最近、レバノンと接するイスラエル北部の住民の安全に懸念を示した。だが、この1年近くにわたって彼らをますます危険に陥れる政策を自ら取ってきた(そしてガザ戦争の停戦を断固拒否してきた)後では、空虚に聞こえる。
レバノンは、大多数の住民の意思に反して、ヒズボラによって今回の争いに引きずり込まれ、一部地域がイスラエルの爆撃を受けて大打撃を受けている。
確かに、パレスチナ人に同情し、ガザにおけるイスラエルの軍事行動に激怒するレバノン人は多い。だが、そのために、自分たちの平穏な暮らしまで差し出すつもりがあるかどうかは疑問だ。
一方、昨年10月の奇襲攻撃の首謀者で、最近ハマスのトップに就任したヤヒヤ・シンワールは、イスラエルとヒズボラの緊張悪化に満足の笑みを浮かべているかもしれない。
シンワールは、イスラエルに対する「抵抗の枢軸」(イエメンのフーシ派やヒズボラを含む)を結束して立ち上がらせ、地域戦争に持ち込もうという計画なのだ。
あれから約1年。世界はそのシナリオに、かつてなく近づいている。
Asher Kaufman, Professor of History and Peace Studies, University of Notre Dame
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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