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ホームレスたちと河川敷で寿司パーティー、そして「お母さん」と感動の再会をした

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月2日 18時25分

8カ月前にあたる7月のある日、荒川沿いの小さな森を通ると、茂みの隙間から、腰を曲げて何かをしている老婦人の姿が見えた。しばらくして、私はまたそこを通って、再び彼女が同じ行動をしているのを見た。私はとても好奇心があって、木の茂みを隔てて老婦人と話を始めた。

彼女が腰をかがめてやっていたことは、普段集めている飲料品のキャップを一つ一つ地面に埋めて、美しい模様をつづることだった。その老婦人(私は「お母さん」と呼んでいる)との会話の中で、彼女は数奇な人生経験の数々を話してくれた。その中で自分の息子のことについても話してくれていたのだ。

お母さんに話を聞いてからしばらくの間、私の頭の中にはいつも彼女の孤独な姿が思い浮かばれた。

私は彼女のために何かしたくて、お母さんに長い雨靴を買ってあげようと思った。なぜなら彼女と話をしていたとき、彼女が古いプラスチックのサンダルを履いていたことに気づいたからだ。雨が降ったばかりなので、靴に泥がついていた。野外生活者にとって、長靴は欠かせない。

そのために、イオンモールに行って、最も長くてサイズの大きい女性用の赤い長靴を選んだ。

同時に、お母さんのために善意の嘘もでっち上げた――妻のために買った長靴ですが、サイズが合わず、返品するのもおっくうですし、家に置いても場所を取るので、よかったらお母さんにあげたいのです、サイズ合うかどうかわかりませんが。

プレゼントは買ったし、せりふも覚えたけど、どうやってお母さんに渡そうか?

荒川に桂さんと斉藤さん(仮名)を訪ねに行くたびに、その長靴を自転車の後ろのカゴに入れて、お母さんと会うことができたらあげようと思っていた。しかし、なかなか思い通りにいかなかった。

「また会いたいと思っていました」とお母さんは言った

しばらく経ったある日、桂さんを訪ねた後の帰り道だった。道路の向こうの遠くに、自転車に乗ってゆっくりとこちらに近づく女性が見えた。

あれはお母さんじゃないか――。私たちが近づくと、彼女も私を認識した。再会して、私たちはとても喜んだ。私はお母さんに「お久しぶりです」と言い、お母さんも「この前に話をしてから、また会いたいと思っていました」と言ってくれた。

私は「会えてよかった。家に帰って庭で待っていてください。20分後にまた来ますから」とお母さんに言った。

「これからは洪水が来たら、この長靴を履いて逃げられる」とお母さんはつぶやいた

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