「輪島復興」に立ち上がる若者たちの声を聞け――過疎高齢化の奥能登で、人を動かし旗振り役を務める勇者たち
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月5日 18時20分
山下は言う。「これからの復興を考えるときに、机に座って『町の将来を考える会』をやってもたいてい人は集まらない。じゃあ若い人が来たくなる町って何だろうって考えたら、わくわく楽しい町だった」
復興は、やってみながら考える。そう思い至った山下たちは、その後も立て続けにイベントを開催した。
炊き出しをバーベキューに変えて「肉フェス」をやれば高齢者含め延べ800人が集まり、映画館が存在しない奥能登で土曜夜に野外映画上映会を開催したら、映画を真面目に見ている人と、走り回る子供たちと、酒を酌み交わす年配層がいる、映画館にはない面白い空間が生まれた。
山下に言わせれば、「復興計画を作ることは必須ではない」。それは目標ではなく過程であるはずだ。「いろんなことを仕掛けて、みんなが楽しかったことや、こうしたほうが良かったという理想の積み重ねの先に、住みたい町のイメージが出来上がっていく」。
そうした復興の先に、どんな未来が待っているのか。それを示した例が、東日本大震災の被災地にある。
気仙沼キャンプに参加した河原清二(9月12日、七尾高校前)TORU YAGUCHI FOR NEWSWEEK JAPAN
3.11の経験を能登につなぐ
8月初め、宮城県気仙沼市で、地元の町づくり事業や子供たちの探究学習を支援する一般社団法人「まるオフィス」が能登の高校生たちを招いて2泊3日の「気仙沼キャンプ」を主催した。
まるオフィスは、13年前の東日本大震災を機に気仙沼に移住した若者と地元の若者が立ち上げたNPO。今回のキャンプを一緒に企画・運営したのは、復興に向かう気仙沼の町で生きてきた気仙沼出身の大学生たちだ。
石川県穴水町在住で、石川県立七尾高校に通う河原清二(17)も、このキャンプに参加した。その理由は「復興のために自分には何ができるんだろうって考えたときに、3.11で復興に携わった人たちに当時の経験を聞きたかったから」だ。
今年1月に家族と共に輪島で被災した河原は、避難所や関西の親戚宅を転々とした後、母と弟2人と穴水に引っ越した。父は輪島で働き、妹は大阪の中学に転校したので、今は家族が離れ離れだ。
13 年前に津波と火災で火の海と化し、その後復興した気仙沼で地元の人たちと交流した河原は、「13年たったらこういう感じになれるというイメージを持てた」と言う。
気仙沼出身の岩槻佳桜(19)は、東日本大震災後に自分が他者から受け取ってきたものを返したいという思いでキャンプを企画した。高校時代、地域と関わることの面白さを教えてくれたのが、まるオフィスの大人たちだった。
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