台風の後、河川敷のテントに居られなくなった女性ホームレス。イオンの前から電話が掛かってきた
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月16日 18時25分
残念なことに、お母さんは私の提案を受け入れてくれなかった。
「ありがとうございます。でも、私は息子が来るのを待ちます。もし私がこんなに人に面倒をかけていると彼が知ったら、必ず不機嫌になります。私は今日、息子にまた電話をかけてみて、いつ来られるか聞いてみます。彼は最近仕事が忙しいので、私に会いに来なかったんだと思います」と、お母さんは言った。
お母さんから「会いたい」という電話が掛かってきた
翌日の昼、私はお母さんから電話を受けた。イオンの前の電話ボックスにいて、すぐに会いたいとのことだった。
「スーパーの入り口のベンチに座って待っていてください、すぐに行きますから」と私は答えた。
10分後、自転車でスーパーに着いた。お母さんが私の言ったベンチではなく、歩道のそばに座っているのが見えた。自転車を置いて、歩いてそこに行き、彼女と並んで座った。
お母さんは、「隣の人に私たちの話を聞かれたくないので、ここに座って待っていた」と説明してくれた。
窮地に陥り、追い詰められて居場所のない彼女だが、プライドは忘れていないのだろう。
歩道のそば座っていたお母さんは、数日間でずいぶん老けたようだった
お母さんは昨日の午後、荒川の森を出てから一度も帰らなかったのだという。
彼女が私を呼び出したのは、いま孤独で無力だから。心の中にしまっている言葉を吐き出したいのだ。息子はそばにいないし、何日も電話が繋がらない。周りには信頼できる人も、心を開いて話せる人もいない。
だから、お母さんはもう、日本人が大事にする「他人に迷惑をかけない」という美徳を気にしていられなくなったようで、週末にもかかわらず私を呼び出して、心の内を話したいと言ったのだろう。
実はお母さんの本音は、ホームレスの隣人への不満もあるし、彼女自身の過去のこと、息子のことなどもある。お母さんが何を言っても、私はずっと耳を傾けていた。
このままではお母さんの生活が危ない
お母さんが私に会いに来てほしいと言った日、彼女は手元にあった自作の小さな巾着袋を全部私に渡して、「1つ800円で、また売ってくれませんか」と言った(編集部注:巾着袋については、第7話参照)。
お母さんがそう言って私に頼んだのは、彼女の今の生活に危機があったからに違いない。
私はお母さんに言った。「わかりました。この18個の小さな布袋は全部受け取って、今すぐお会計します」
私は1万5000円を渡して、彼女の手に握らせた。このお金があれば、お母さんは少なくとも10日間くらいは飢えることはないと思った(お母さんの年金口座は息子が握っている)。
この記事に関連するニュース
-
東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパートに行って「ある作品」を作っていた
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月9日 17時50分
-
〈ジャンポケ斉藤・不同意性交〉「元いじめられっ子が“地元の星”になったのに…」事件報道に地元はタメ息、スタッフからは擁護の声も「メンタルは不安定、女性依存」解雇原因は「今回の事件だけではない」
集英社オンライン / 2024年10月8日 17時59分
-
「これはただの虫刺されじゃない」息子の全身に発疹が…家も家族もむしばんだ「誰にでも起こりうる原因」とは?
Finasee / 2024年10月3日 17時0分
-
ホームレスたちと河川敷で寿司パーティー、そして「お母さん」と感動の再会をした
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月2日 18時25分
-
ちっちゃい野良猫の“10年後の姿”にビックリ!親はライオンかな?:9月に読みたい記事
女子SPA! / 2024年9月24日 8時45分
ランキング
-
1英首相、ハマス指導者の死「悼まず」 人質の全面開放と即時停戦を要請
産経ニュース / 2024年10月18日 17時34分
-
2中国外務省が西田敏行さんに哀悼の意 「両国人民が好きだった」
産経ニュース / 2024年10月18日 17時22分
-
3ヒズボラ、対イスラエル戦「新たな段階」 ハマス指導者殺害受け
ロイター / 2024年10月18日 15時52分
-
4ついにイスラエルが地上侵攻を開始...それでもレバノン軍が動かない理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月18日 16時5分
-
5中国海警局、日本漁船を「追放」 尖閣諸島周辺の「領海に不法侵入」で
AFPBB News / 2024年10月17日 20時45分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください