シンワール殺害で終結は間近か? ガザ戦争の行方とネタニヤフの選択
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月23日 11時30分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)
<イスラエル奇襲の首謀者を討ち取っても、ネタニヤフ首相は矛を収めそうにないが>
イスラエル兵がヤヒヤ・シンワールを殺害──。そんなニュースが飛び込んできたのは10月17日のことだ。
シンワールは、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの最高指導者で、昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲の首謀者でもある。当然、イスラエルにとっては、絶対に討ち取りたい標的の1人だった。
その「任務」が片付いたことで、約1年にわたりガザ(と近隣諸国)で続いてきた紛争に終止符が打たれる可能性が出てきた......ようだ。
昨年の奇襲の犠牲者は1200人(ほとんどが民間人)と、ユダヤ人が1日に殺害された数としては、ナチスドイツによるホロコースト以来だとして大きな衝撃を与えた。しかし、これに対するイスラエルの報復攻撃は、ガザのパレスチナ人推定4万人以上の命を奪った。こちらも犠牲者のほとんどは民間人で、多くは女性と子供だった。
それなのに、この戦争の原因をつくったシンワールは奇襲以来、ガザの地下に複雑に張り巡らされたトンネルに潜伏していた。
16日にイスラエル兵が、ガザ南部の建物にいた3人の男に向けて発砲したとき、そのうちの1人がシンワールだとは、兵士たちも思いもしなかったようだ。だが、3人の遺体を調べると、1人がハマスの最高指導者に酷似していた。そこで彼らの上官が、遺体のDNAと指紋と歯型を採取して当局に照会したところ、すぐにシンワールであることが確認されたという。
イスラエル軍の爆撃で倒壊したガザの小学校(今年10月10日) MAJDI FATHIーNURPHOTOーREUTERS
シンワールはハマスを体現する存在だった。その殺害をもって、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相らは、自分たちの戦略が正しかった証拠だと声高に主張するのか。あるいはアメリカなどの圧力を受けて、今後は停戦プロセスに注力するのか。
ハマスは消えていない
著名ジャーナリストのボブ・ウッドワードは新著『戦争』で、ホワイトハウスのブレット・マガーク中東政策調整官の言葉を紹介している。いわく、ここ数カ月に何度となく開かれた停戦に向けた協議で、エジプトやカタールに住むハマスの政治部門の報道官は何度か、停戦合意を大筋受け入れたが、最終決定権を持つシンワールが頑として首を縦に振らなかったという。
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