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シンワール殺害で終結は間近か? ガザ戦争の行方とネタニヤフの選択

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月23日 11時30分

それが本当なら、シンワールなき今、これまでハマスの対外窓口だった幹部らが、指導者の役割を担うかもしれない。そうなれば、エジプトなどイスラム教スンニ派のアラブ諸国、とりわけサウジアラビアの指導者たちも、ガザの復興と、ガザの境界線の治安確保を申し入れる可能性がある。そして、こうした要素が全て交渉のテーブルにのれば、ネタニヤフも和平交渉に参加するかもしれない。

ハマスは消滅したわけではないが、幹部のほとんどは殺され、軍事部門は大打撃を受けている。ガザ住民の支持も失いつつあるようだ。世論調査や報道によると(その真偽は不明だが)、パレスチナ人の過半数が、昨年の奇襲は間違いだったと考えているという。自分たちを容赦ない戦争と、著しい苦難に引きずり込んだシンワールの死に、安堵している住民もいるとされる。

その一方でイスラエルはここ数週間、レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラの幹部を次々と殺害。現在は首都ベイルートを含めレバノン全土に点在するヒズボラの武器貯蔵施設や司令部をつぶす段階に入っており、一般市民120万人(人口の5分の1だ)が避難を余儀なくされている。

ヒズボラは、イスラエルと対立するイランの代理勢力であり、かねてからレバノン南部からイスラエルに向けてロケット弾を撃ち込んでいた。

ネタニヤフとヨアブ・ガラント国防相は、レバノンでの「仕事」は終わっていないと強硬な姿勢を崩していない。レバノンの人々がヒズボラを追放しないなら、第2のガザにしてやるとさえ言っている。

庶民に愛されるヒズボラ

とんでもない話だ。まず、レバノンは主権国家であり、イスラエルの占領地ではない。ベイルートは「中東のパリ」と呼ばれた美しい街だった。

第2に、イスラエルは1980年代にパレスチナ・ゲリラの拠点があったレバノンに侵攻し、18年にもわたり南部に進駐したが、2000年に撤退した経緯がある。

その空白を埋めるように勢力を拡大したヒズボラは、政党として国民議会に議席を獲得したり、精力的な社会福祉活動を展開したりと、レバノン社会に広く深く浸透してきた。ヒズボラのせいでイスラエルの爆撃を受けているとはいえ、レバノンの人々がそう簡単にヒズボラに背を向けることはないだろう。少なくともアラブ諸国や欧米諸国が、レバノン復興を本気で支援する姿勢を示す必要がある。

とはいえ、ここ数週間の攻撃で、ヒズボラは最高指導者のハッサン・ナスララ師とその側近や後継者ら、多くの幹部を失った。また、レバノン軍幹部は、イスラエルのほうが軍事的に優位であることを知っているはずであり、停戦に前向きかもしれない。

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