シンワール殺害で終結は間近か? ガザ戦争の行方とネタニヤフの選択
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月23日 11時30分
もう1つ興味深い事実がある。ナスララは生前、ガザでの戦闘が終息したら、ヒズボラもイスラエルに向けたロケット弾攻撃をやめると言っていた。従って、もしガザの停戦が実現したら、後継者らはナスララのこの発言を理由に、気乗りのしない戦争に終止符を打つかもしれない。
ただ、イスラエルとイランの間で、幅広い衝突が起こる恐れもある。10月1日にイランがイスラエルに向けて弾道ミサイルを発射したことを受け、イスラエルは既に何らかの報復措置を取ることを決めている。報復は攻撃に「比例」すべきだとするジョー・バイデン米大統領と協議の上で、ネタニヤフは標的を選んだとされる。
その一方で、今回の衝突について終息宣言が飛び出す可能性もまだ残っている。両国は4月にも互いに直接ミサイルを発射したが、目標を限定して早期に幕引きを図った。
確かにこの地域には、ハマスやヒズボラ、パレスチナのイスラム聖戦(PIJ)、イエメンのフーシ派など、「抵抗の枢軸」と呼ばれる反イスラエル民兵組織が多数存在する。だが、彼らに武器を提供するイラン指導部も、ガザ戦争を攻撃の理由に挙げてきた。
そうだとすれば、ガザについて停戦合意がまとまれば、イランも矛を収める口実になる。もちろん、停戦や人質解放は、地域安定に向けたプロセスのスタートにすぎない。そこにはイスラエルとパレスチナの共存を可能にするための取り決めが含まれ、難航するのは必至だろう。
それでもシンワールの死で、この地域の全てのプレーヤーと同盟国が、そのプロセスの第一歩を踏み出すための扉を開いたのは間違いない。
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