コワモテ国家ハンガリーが、異次元の優しい家庭政策で出生率アップに成功している
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月23日 19時46分
人口が少ないハンガリーでこれ以上少子化や人材の流出が続くと、国を維持できない。けれども西側の豊かな国のように移民を積極的に受け入れるとどうなるのか。
「人口の少ないハンガリー人、そしてハンガリー文化が消滅してしまいかねません」と言うのは、欧州経済社会評議会(EESC)のヨー・キンガ委員だ。
こうした背景からオルバン政権は大胆な家族政策へと舵を切り、2010年からの14年間、家族政策を国家の最優先として、財源を2倍以上に、予算をGDPの6.2%まで増やした。これはGDP比においては世界一の支出だ。「ハンガリーの家族政策は、子どもを持つことを『リスク』ではなく、『価値のあるもの』という社会意識へシフトするのが目的です」と、ヨー委員は付け加える。
ハンガリーの5つの家族政策
ハンガリーの家族政策は、「家族の経済的支援」「住宅購入支援」「家族に優しい環境づくり」「ワークライフバランス」「子どものウェルビーイング対策」の5つの分野に分かれており、各分野には多数の施策が存在する(上記図表参照)。
オルバン政権の行き届いた家庭・教育施策をこちらで紹介
これらの施策は、まだ子どもを育てる資金のない学生でも、若いうちに子育てができるように設計されている。なぜなら、どの先進国でも、キャリアや経済的安定を待っているうちに結婚や出産が遅れ、その結果、子どもが欲しくても妊娠が難しくなる年齢に達するカップルが増えているからだ。
さらに、祖父母、父親や母親が3年間みっちり育休を取っても、母親が好きな形で職場復帰でき、子どもが3歳になるまで親は残業禁止という点も、日本の少子化対策にはない視点だ。
「ハンガリーの家族政策は、女性が望む働き方をサポートします」と強調するノバーク前大統領。興味深いことに、ハンガリーでは、10年から22年まで働く女性の割合は59%から75%まで増えたのに、出生率も同期間で1.25から1.52まで上がった。子どもがいても働きやすい環境があるのではないか。
そもそも、子どもがいようがいまいが、仕事以外の生活を大切にし、人生を楽しむ価値観がハンガリーには根付いている。実際に日曜日は多くの店がシャッターを下ろす。
ノバーク前大統領(中央)とその家族 COURTESY OF NOVÁK KATALIN
ハンガリーでは法律で残業が認められているのは年間250時間以内。一方、日本は360時間以内。OECDは「長時間労働=週50時間」と定義しており、日本人の15.7%が週50時間以上働く(OECD41カ国中36位)半面、ハンガリーは1.5%しかいない(OECDで8位)。
この記事に関連するニュース
-
人々の家族形成への忌避感の根本にあるものとは? 日本女子大学現代女性キャリア研究所が 12/14 にシンポジウムを開催
PR TIMES / 2024年11月20日 14時45分
-
人々の家族形成への忌避感の根本にあるものとは? 日本女子大学 現代女性キャリア研究所が12/14にシンポジウム 「非婚・少子社会への視座 -- 若者の意識・家族政策の変化と少子化の現状 -- 」を開催
Digital PR Platform / 2024年11月20日 14時5分
-
地球の少子化問題とその影響—ライフスタイルと価値観の転換が急務
Global News Asia / 2024年11月20日 10時0分
-
俳優・モデルの杏さんも子育て中…少子化対策の「優等生」フランス 経済支援や産休・育休制度…その具体的な施策と近年の“苦戦”の背景
まいどなニュース / 2024年11月6日 19時45分
-
「心の豊かさ」を優先するのは高齢者だけ…内閣府の世論調査で判明した「とにかくカネが足りない」現役世代の叫び
プレジデントオンライン / 2024年10月25日 18時15分
ランキング
-
1イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容疑
ロイター / 2024年11月22日 3時50分
-
2ロシアがわずか1000km先にICBM発射情報、アメリカへ「核攻撃いとわない」警告か
読売新聞 / 2024年11月21日 20時1分
-
3“長距離ミサイル攻撃”駐日ロシア大使が批判…西側諸国が「露と戦うということ」
日テレNEWS NNN / 2024年11月21日 18時11分
-
4プーチン大統領、2週間近く公の場に姿見せず 3年間で最長 露独立系メディア
日テレNEWS NNN / 2024年11月21日 21時23分
-
5ザビエルの遺体に祈り、インド 10年に1度の一般公開
共同通信 / 2024年11月21日 19時49分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください