コワモテ国家ハンガリーが、異次元の優しい家庭政策で出生率アップに成功している
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月23日 19時46分
「ウェルビーイング」とは、幸福で肉体的、精神的、社会的全てにおいて、満たされた状態で持続的な幸福を指すが、ハンガリー政府は子どものウェルビーイング施策の1つとして、「エリザベス・プログラム」に今年、2280万ユーロ(約37億円)を費やした。
これは観光地として人気のバラトン湖の畔にある別荘で行われる、ヨーロッパ最大のキャンプで、子どもたちが長期休暇を過ごせる幅広いアクティビティーが提供されている。12年から24年まで計約140万人の子どもたちが訪れた。
このように「ワークライフバランス」や「子どものウェルビーイング」など、「国民は心身共に満たされ幸福であるべきだ」という視点がハンガリーの家族政策の重要な軸となっている。
さらに、家族政策における住宅購入補助プログラムは建築業界の雇用を生み出し、11.2%だった10年の失業率が22年には3.6%まで下がった。「人々は家と同時にさまざまな商品やサービスを買います。つまり、これは経済全体が活性化されるということ。課題はありますが、税収も上がり経済効果を出しました」とハンガリー国際問題研究所のバシャ・ラースロー博士は言う。
このようにリベラルな政策を実行しているオルバン政権が西側諸国から批判されがちなのはなぜか。
「オルバン政権は親ロシア派や親中国派だと報じられるときがありますが、実際は親ハンガリー派。つまり、ハンガリーの国益を一番に考えてあらゆる国と友好な関係を築く現実的な外交政策を取っているのです」と、政治と国際関係の専門家であるスティーブン・ナギ国際基督教大学教授は言う。「どの国からも指図されたくはないのでは」
つまり、ウクライナ戦争や移民政策において、やすやすと西ヨーロッパの思惑に迎合しないからハンガリーはたたかれている、というわけだ。
だが、課題もある。ブダペスト郊外に住む、小学生の子どもが2人いる会計士と営業職の共働きの夫婦に聞くと、「生活は楽ではありません。保育園から高校まで公立で学費は無料ですが、英会話やスイミングなどの校外活動にお金がかかります」と話す。
その一因は、家族政策の財源となっている世界一高い27%の消費税だろう。ただし食べ物やエネルギーなど生活必需品は比較的安い。ハンガリーの中間層は普段は外食やショッピングなど贅沢を極力控えるが、週末はピクニックやスポーツを家族と楽しんだり、友達や親戚を自宅に招いたりして、夏と冬は家族でゆったりと旅行へ行く。
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