【インタビュー】LL・クール・J、11年ぶりの新作に込めた「ヒップホップへの愛」
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月25日 15時20分
大物ラッパーが多数協力
テレビや映画に出演するようになると、音楽活動は事実上休止するラッパーが多いが、LLは違う。
2016年には、ラップ界の大御所ドクター・ドレーのビートに合わせて、フリースタイリングを披露する動画を発表。以来、ドレーとは30〜40曲を共作してきた(ただし自分の担当部分の仕上がりには満足していないという)。
新作『THE FORCE』は、「真にクリエーティブなエネルギーの周波数」という意味が隠されているという。実際、歌詞を見れば、これまで最高傑作とされてきた90年の『ノック・ユー・アウト』以来の力作となっている。
3曲目の「サタデー・ナイト・スペシャル」は、大物ラッパーのリック・ロスとファット・ジョーの参加を得て、ストリートの現実にさらされるギャングの生きざまを歌う。
LL COOL J - Saturday Night Special ft. Rick Ross, Fat Joe
6曲目の「プロクリビティーズ」は、若者に大人気の女性ラッパーであるスウィーティーとのなまめかしいラブソングだ(これもLLがラップにもたらしたジャンルだ)。続く「ポストモダン」では、80年代のLLを彷彿とさせるラップを聴くことができる。
LL COOL J - Proclivities ft. Saweetie
ほかにも「プレイズ・ヒム」ではNAS、「ヒューイ・イン・ザ・チェア」でバスタ・ライムス、「マーダーグラム・ドゥ」でエミネムなど、ベテラン人気ラッパーがこぞって参加しており、さすがLLの新作だとうならずにはいられない。
Praise Him
Huey In The Chair
LL COOL J - Murdergram Deux ft. Eminem
目立つ社会派の歌詞
ただし多くのファンが驚くのは、新作にアメリカ社会における黒人の文化や生き方を扱った歌詞が目立つことかもしれない。
例えば、4曲目の「ブラック・コード・スイート」では母親の料理から始まって、スティービー・ワンダーやデューク・エリントンなど黒人文化を語り、10曲目の「ヒューイ・イン・ザ・チェア」は急進的な公民権運動を展開した組織ブラック・パンサーの共同創始者ヒューイ・ニュートンを題材にしている。
Black Code Suite
社会派とでも呼ぶべき作風は、1曲目の「スピリット・オブ・サイラス」から顕著だ。これは、13年に元ロサンゼルス市警の警官クリストファー・ドーナーが、同僚ら4人を殺害した事件を、ドーナーの視点から語る体裁になっている。事件前に解雇されていたドーナーは、犯罪被疑者に対する過剰な暴力を内部告発したことが解雇につながったと主張していた。
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