フーシ派がロシアの悪名高い武器商人と手を結び、紅海はますます危険の海に
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月29日 11時6分
エリザベス・ブロー(米アトランティック・カウンシル上級研究員)
<紅海を航行中の商船に対する攻撃で世界の海運を揺るがすフーシ派が、ロシアの武器商人からの調達を開始>
イエメンの反政府武装勢力フーシ派が、紅海を航行する船舶に対する攻撃を始めたのは昨年11月。対象となっているのはイスラエルや西側諸国と関係のある船だ。
以来、アメリカ海軍はイエメン国内のフーシ派施設にミサイルを撃ち込んだり、商船に向けて発射されたミサイルをイギリス海軍と共に迎撃するなどの対応を取ってきた。他の欧米諸国の海軍も紅海でパトロール任務に就いている。
だがフーシ派が態度を軟化させる気配はない。それどころか、悪名高いロシアの武器商人、ビクトル・ボウトから武器を調達しようとしている。これは世界の海運にとって頭の痛いニュースだ。
フーシ派は、過去数十年間に欧米諸国の軍隊が相手にしてきた「敵」とは違う。従来型の軍隊でもなければ、タリバンのように特定の地域で権力を握ることのみを目標にした反政府勢力でもない。ソマリアの海賊のような、単なる犯罪者集団でもない。
フーシ派は強力な民兵組織で、船舶を攻撃すれば世界から注目を浴びることができることに気付いている。おまけに普通なら正式な国の軍隊が使うような武器を使っている。
紅海を航行する船舶への攻撃を始めて以降、フーシ派は思う存分、世界の注目を集めてきた。そして、自分たちは高性能な兵器も入手できるぞとアピールしてきた。
例えば今月10日、フーシ派はリベリア船籍の船舶をドローンとミサイルで攻撃した。9月にはイスラエルに向けてミサイル1発を発射したが、これはイスラエルによって迎撃されている。
この時に使ったのは超音速ミサイルだったというのがフーシ派の言い分だが、その可能性は低い。だがフーシ派の攻撃の主眼は、「次は何が来るか」と世界を怖がらせることにある。そして米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、フーシ派はボウトとさらなる武器の納入に向けて交渉を行っているという。
ボウトは世界で最も悪名高い武器商人だ。「死の商人」とも呼ばれ、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)のための仕事もしてきた。
だが2008年、米捜査当局が、おとり捜査によってタイでボウトを逮捕。ボウトはアメリカに移送され、2011年アメリカ人殺害の共謀などの罪で禁錮25年の判決を受けた。「彼は地上で最も危険な人物の1人だ」と、逮捕作戦を指揮したマイケル・ブラウンは2010年、CBSの報道番組『60ミニッツ』で述べている。
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