「スマホ投稿」が暴露した秘密...台湾防衛が中国に筒抜けとなる理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月7日 13時30分
ポール・ホワン(台湾民意基金会の研究員)
<市民がスマホで撮影した画像がネット上にあふれ、対艦ミサイルの位置情報が中国軍に筒抜けに>
それは台湾ではありふれた一日だった。中国がまたもや軍事演習を行ったのだ。
中国軍の艦船と軍用機が台湾周辺を威嚇的に旋回するのは毎度のこと。台湾軍も心得たもので、いつものように各部隊に緊急出動を命じた。
とりわけ重要な任務を担うのは、移動式の地上発射型対艦ミサイルを運用する機動部隊だ。実戦では、これらの部隊が本島各地の秘密の地点からミサイルを発射し、台湾上陸部隊を乗せた中国の艦船を撃沈することになる。
ところが、台湾側が知らないうちに機動部隊の動きはインターネット上にさらされ、秘密のはずのミサイル発射地点を、中国側がピンボイントで狙える状態になっていた。実戦であれば、機動部隊は装備もろともあっという間に吹き飛んでいたところだ。
これは台湾の頼清徳(ライ・チントー)総統の就任式が行われた今年5月20日の数日後に実際に起きた出来事である。
中国政府は頼を「独立派」と見なして警戒している。そうでなくとも最近では中国は何かにつけて、自国の領土と主張する台湾周辺で威嚇的な軍事演習を繰り返している。
5月23日の演習では、いつもどおり台湾側もそれに対抗して周辺海域と空域に部隊を派遣したが、実弾は1発も発射されず、程なく中国は演習を終了。台湾政府はあたかも勝利宣言のように防衛体制は万全であり、何の心配もないと市民に保証した。
市民が投稿した海鋒大隊のミサイルの写真を報じるケーブルテレビの画面より。5月に撮影したとされ、場所も詳しく説明していた SHARED BY A LOCAL RESIDENT VIA TVBS
だがその後6月に中国最大のソーシャルメディアアプリ微信(ウェイシン)に、ある記事が載った。これは中国の防衛関連企業「北京藍徳信息科技」が投稿した記事で、一般公開されている。
記事が主に扱っているのは、地対艦ミサイルを運用する台湾軍の機動部隊が5月の演習時にどう動いたか。これらの機動部隊は「海鋒大隊」に所属している。
海鋒大隊は台湾製の亜音速ミサイル「雄風II型」と超音速ミサイル「雄風III型」を運用。台湾の海岸に押し寄せてくる中国の侵攻部隊を撃破する最終防衛を担うことになる。アメリカ製の対艦ミサイル・ハープーンも運用する予定だが、納入が遅れに遅れている。
問題の記事は、海鋒大隊の12の基地の地理的位置を正確に伝えている。恒久的なミサイル発射基地は敵に見つかりやすい。台湾軍も自軍の基地が中国軍に知られていることを想定して、機動部隊を使うことにしたのだ。機動部隊は台湾各地に散らばり中国軍の上陸部隊を壊滅させつつ、飛来するミサイルを巧みにかわして任務を全うするはずだ。少なくとも理論上は。
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