「スマホ投稿」が暴露した秘密...台湾防衛が中国に筒抜けとなる理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月7日 13時30分
もっとも、アメリカの情報機関や国防総省も似たような状況だ。アメリカでは膨大な数のコンサルティング会社や業者が「インテリジェンスのアウトソーシング」を提供している。
ただし、米中とも企業の活動や一般に入手可能な情報を収集分析するOSINTは、国家としての総合的な情報、監視、偵察能力としては最低レベルにすぎない。中国も政府や軍事レベルで、はるかに強力で秘匿性の高いツールを保有していることは確実だ。
例えば、中国の商用リモートセンシング衛星システム・吉林1号は、報道によると昨年には既に138基が軌道上にあり、地球上の任意の地点の最新画像を宇宙から10分おきに撮影できる。軍と国の情報機関は数百基の強力なスパイ衛星群を利用している。
中国は既に台湾のあらゆる場所を常時追跡できる、というのは大げさかもしれない。しかし、今回の微信の投稿が示すとおり、中国の情報関連能力は急速に進化しており、ソーシャルメディア時代に台湾が機密を隠し切れないという現実がそれを助けている。台湾軍はより慎重かつ柔軟な戦術で活動しなければ、戦争の初期段階で、最も重要な防衛資産を中国にたやすく破壊されかねない。
複数の台湾軍関係者は、海鋒大隊には公表されていない「待機」地点が台湾全土にあることや、投稿で暴露されたのは部隊全体のごく一部であることを認めている。しかし、部隊が配備される可能性のある地点が暴露され記録されるたびに、中国による「標的の解析」の精度が高まり、衛星などを使って迅速かつ容易に追跡できるようになる。
台湾国営の中央通訊社でさえ、機動部隊を見かけた民間人のニュースや写真を頻繁に報じており、時には移動の詳細なルートや時期を伝えている。政府と軍のこうしたセキュリティー意識の欠如は、愚かであり自殺行為だと専門家は語る。
戦争が起きて思い知る
機動部隊は、最も機敏で追跡が困難な軍事要素の1つと考えられている。アメリカの評論家や国防総省は台湾に対し、ハープーンの購入と配備の強化を繰り返し促している。台湾が21年3月に発表した「4年ごとの国防総検討(QDR)」も、対艦ミサイルを「ステルス性と機動性があり、探知が困難」とされる「非対称」兵器の筆頭に挙げている。
しかし、これらの兵器も賢く運用されなければ、戦車や戦闘機などいわゆる通常兵器より脆弱になり得ると、ブラウン大学のライル・ゴールドスタイン客員教授は指摘する。「多くの人が、台湾の防衛戦略はこうした非対称兵器に依存していると考えているが、長距離精密誘導兵器の時代における台湾の大きな脆弱性を無視している」
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