どちらが勝っても日本に「逆風」か...トランプvsハリス、日本経済にとって「まだマシ」なのは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月1日 14時29分
ハリス氏は「機会の経済」を標榜しており、中間層の底上げを狙った政策を打ち出している。大きな柱としては、児童税額控除の拡大を中心とした中間層減税、食料品価格の抑制、住宅市場改革の3つである。
中間層と富裕層の格差を是正するため、ハリス氏は子供を持つ世帯や低所得層を対象に、最大6000ドルの税額控除を実施するとしている。また多くの庶民がインフレに苦しんでいることから、より積極的な物価対策を実施したい意向である。
DOUGLAS RISSING/ISTOCK (CAPITOL HILL), ILLUSTRATION BY CHAMPC/ISTOCK (GRAPH), ILLUSTRATION BY VLAD PLONSAK/ISTOCK (MAGNIFYING GLASS)
具体的には法整備を通じて、不当に価格をつり上げる企業に対して罰則を与えるという厳しい内容が想定されている。
中間層の住宅購入が難しくなっていることを踏まえ、若い世代が住宅を容易に購入できるよう、安価な住宅を提供する事業者に優遇税制を適用するほか、初めて住宅を購入する世帯には頭金2万5000ドル(約380万円)を支給する。
仮にこれらの政策を実施した場合、相応の財政支出が必要となるばかりでなく、企業業績にも逆風となる可能性が高い。財政赤字の増大はインフレ要因だが、厳しい価格抑制策とバランスが取れた場合、インフレは抑制される一方、短期的な景気は足踏みするかもしれない。
もっとも、中長期的に見た場合、一連の政策は中間層の底上げにつながるので、必ずしも経済にとってマイナスとはいえない。短期的には株価下落や成長率の鈍化が生じるかもしれないが、中間層底上げの政策が効いてくれば、再び経済が成長軌道に乗るシナリオも十分にあり得るだろう。
金融政策についてはインフレ抑制が重視されるので、金利の引き上げが想定され、その場合にはドル高が生じやすくなる。反対に日本は円安が進みやすくなり、単純に考えれば輸出企業にとって朗報だが、そうは問屋が卸さないかもしれない。
現在、アメリカは景気が足踏みしそうな状況であり、こうした状況で、反企業的な政策が次々に実施された場合、景気が大幅に鈍化することも考えられる。そうなると、せっかく円安になっても、その効果は景気鈍化によって剝落してしまうだろう。
では、日本の産業界にとっては、トランプ氏とハリス氏のどちらが大統領になったほうがよいのだろうか。政策の非連続性や過激度という点ではトランプ氏に軍配が上がるので、ハリス氏のほうが安定的なのは確かである。
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