どちらが勝っても日本に「逆風」か...トランプvsハリス、日本経済にとって「まだマシ」なのは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月1日 14時29分
だが日本の産業界にとってハリス氏ならば好都合なのかというとそうはいかない。
なぜなら、冒頭にも説明したようにアメリカ社会は大きく変貌しつつあり、外国企業がアメリカに進出したり、アメリカ企業を買収することが好まれなくなっているからである。どちらが大統領になっても日本企業にとって逆風となる可能性が十分に考えられるのだ。
こうした社会の変化を象徴する出来事が、USスチールの買収をめぐる騒動と、日本メーカーにおける組合結成の動きである。
米社会の内向き傾向が加速
日本製鉄は23年12月、アメリカの伝統ある製鉄会社USスチールを買収すると発表した。当初はよくある日本企業による米企業の買収劇と見なされており、買収はスムーズに進むかと思われた。
だが突如、政治的な横やりが入ったことで状況が変わっている。トランプ氏が突然、USスチールの買収反対を表明したことに加え、現職のバイデン氏までもが反対の意思表示をするなど、政界が総出で買収を阻止する形になってしまったのだ。ハリス氏もバイデン氏の方針を引き継いでおり状況は変わっていない。
大統領選を前に、共和・民主両党のリーダーが外国企業(日本企業)による企業買収に反対を表明する図式だが、日本にとって不都合な話題であるせいか、「単なる選挙アピール」「日本企業が買収したほうがアメリカにとってもメリットがある」など、国内では問題を矮小化しようという議論ばかりが目につく。
だが現実はそのように生易しいものではないと考えたほうがよいだろう。
今回の反対表明が選挙を前にした政治的アピールであることは明らかであり、企業や投資家の理屈と政界の理屈にズレが生じることも特段珍しいことではない。だが、今回の一件はアメリカ社会の大きな潮流の変化を背景としており、この案件単体の問題にとどまるものではない。
これまでアメリカ社会は、日本やドイツ、中国など外国企業がアメリカ企業を買収したり、アメリカ市場で活動することについて寛容であり、多くの日本企業がアメリカ市場をフル活用して業績を拡大してきた。
だが前述のようにアメリカ社会は急速に内向きになっており、外国企業が自国に入ってくることに対して党派を問わず嫌悪感を感じる人が増えてきている。
ちなみに日本社会は以前から外国企業による国内企業の買収に対して否定的だったが、とうとうアメリカ人も日本人と同じ考えを持つようになったと解釈することもできる。これは戦後アメリカ社会の大きな変化であり、この流れは今後、強くなることがあっても弱くなることはないと予想される。
この記事に関連するニュース
-
トランプ再登板で日本人の生活はどう変わるのか 第2次トランプ政権にとって主要な武器の中身
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 7時30分
-
焦点:歴史的選挙戦戦ったハリス氏、なぜ敗北したのか
ロイター / 2024年11月7日 19時9分
-
相場展望11月7日号 米国株: トランプ勝利要因は、物価高させたバイデン政権への不満 日本株: トランプ勝利は、日本株にとって「良し悪し」
財経新聞 / 2024年11月7日 11時49分
-
アングル:長引く生活費高騰が米有権者の懸案、現政権批判に直結
ロイター / 2024年10月30日 13時4分
-
「トランプ大勝利なら関税大幅引き上げ」は本当か 2025年もアメリカの株価は堅調に推移しそうだ
東洋経済オンライン / 2024年10月27日 14時0分
ランキング
-
1アイスランドで火山がまた噴火 この1年で7回目
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月22日 8時36分
-
2ロシア発射ミサイルは新型中距離弾道弾、初の実戦使用=米国防総省
ロイター / 2024年11月22日 9時56分
-
3レバノン東部空爆47人死亡 イスラエル、ヒズボラ停戦交渉中
共同通信 / 2024年11月22日 7時13分
-
4【トランプ圧勝後の国際情勢を石平氏が分析】アメリカの“中国潰し”で習近平政権が“媚日”を図る可能性 日本に求められるのは“戦略的傍観”
NEWSポストセブン / 2024年11月22日 7時15分
-
5「子どもたちの遺体を見るのはつらい」──ウクライナ ロシア軍が住宅地に攻撃
国境なき医師団 / 2024年11月22日 12時5分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください