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「暴力を振るわれることもある」...「兄貴」が語ったホームレス福祉の現状とは?

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月6日 18時55分

斉藤さんも桂さんも、今は施設に入りたくないと言っていたのを思い出したからだ。

斉藤さんは、自分が施設に行ったら、桂さん一人をここに残すことになって心配だと言った。桂さんは、今はスマートな生き方をしていて、福祉施設に入ることを全く考えていないと言った。施設に入っても、そこでの集団生活に慣れず、ホームレスの生活に戻った人もいるのだという。

兄貴はこう説明してくれた。福祉施設に行きたくない人や施設に入っても出てしまう人は確かにいるが、政府はこのような人に対しては何もできず、彼らが望む生活を続けるのを放任するしかない。

ただし、全体として言えば、福祉施設に入居したいホームレスは多く、むしろ施設のベッドが足りない状態だという。

高齢化社会の日本。荒川の付近では老人ホームの数が増えている

要するに「僧が多く粥が少ない」(中国のことわざで、需要が供給を上回っていることを意味する)のため、福祉施設は介護が必要な老人や体が弱い人を優先的に受け入れるしかないのだ。兄貴の仕事で重要なのは、荒川沿いに住むホームレスの中で誰が最も施設に入居する必要があるかを調べることだ。

私はまた彼に聞いた。「あなたはどうしてこの仕事を受けたのですか」

「30年前から建設省(現国交省)の工事を請け負っていたし、福祉施設と長年付き合ってきた。私自身も放浪の経験があるので、ホームレスたちとは切っても切れない関係が続けてきたんですよ。政府はこの仕事を私に依頼してよかったと思う。もし私がやらなければ、誰も敢あえてやろうとはしないだろうし、誰でもやれることではないだろう」

ホームレスの中には「元ヤクザの人もいる」

兄貴によると、2、3日おきに自転車に乗って荒川周辺を回り、自費で購入したコーヒー飲料を用意して、ホームレスを見つけたら、飲み物を渡して話し合う。それで彼らの生活と健康状態の情報を集めるという。

これは基本的にボランティアの仕事だが、政府からなんらかのメリットを得られることがあるのかもしれない。

「福祉施設のスタッフは自分で調査に行かないのですか?」

私が尋ねると、彼はこう説明してくれた。

「彼らはやるべき仕事も多いです。政府に予算を要求する前に、入居したい人は年金をもらっているのか、アルバイトをしているのか、体調はどうなのかなど、詳細な資料を作らなければなりません」

「福祉施設の人もホームレスと直接話をしたいときがあります。そのときは私を呼んで一緒に行きます。彼らは少し恐れているからです。なにしろ、ホームレスの中には元ヤクザの人もいますし、中には3つ、4つの前科を背負っている人もいます。しかし、彼らの過去がどうであれ、今トラブルを起こさない限り、警察は手を出しません。どうせそろそろ土に入る人たちなので、隠れ家で自滅することができたら万事順調ですよ」

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