「暴力を振るわれることもある」...「兄貴」が語ったホームレス福祉の現状とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月6日 18時55分
このような罪がある人たちは、死ぬまで国の生活保護を申請することはしない。申請をすれば、自分の資料をたくさん提出し、審査を受けなければならないからだ。これは自分で網にかかったことに等しい。
だから施設への入所を勧めに来た人に対し、俺は集団生活を嫌っているなどといった理由を述べて断る。兄貴はその経緯をよく知っていて、彼らと話をしに行ったとき、敏感な話題には触れないようにしている。
「あなたは仕事の関係で、いろいろなホームレスと付き合ってきて、必要な助けを提供してきた。あなたに対する彼らの態度はよいでしょうね?」
「必ずしもそうではありません。私に対し、ののしったり、暴力を振るったりした人もいます。でも、このような人に会っても怖くありません。最初は2回殴られるかもしれませんが、その後は反撃して、すぐに相手を制圧します。もちろん彼らを傷つけないことが前提です。私は自衛隊の特殊部隊出身で、格闘技を学んだことがあるからね」と、兄貴は笑った。
それを聞いた私は、前に出て彼の腕を握って、彼の腕力を試してみたいと思った。やはり筋肉が引き締まっていて、爆発力があるように見える。
高齢化が進むにつれ、独り暮らしをする高齢者が増えている
アパートに行き、死体を発見し、警察で「事情聴取」を受ける
「あなたは福祉施設でボランティアをする以外に、どんなことをしていますか」と、続けて兄貴に聞いた。
「あとは、不動産屋で独り暮らしのお年寄りのアパートの片付けを手伝うことです。お年寄りの隣人が、『臭いがしている』と不動産屋に報告すると、会社は大体どういうことか分かっていて、『すぐ行って調べてくれ』という知らせが私に来ます。私はアパートに行ってドアを開け、死体を発見し、まず電話で警察に通報してから、『事情聴取」を受けて、警察が死体を運んだ後、仕事仲間と一緒に部屋を大掃除します」
「孤独死したお年寄りの家を片付ける仕事は、15~16回やったことがあります。孤独死した人の中には、死んでから数日が経っていて、死体にウジ虫がいっぱい生えていて、見るに忍びないほど惨めな人もいる。相場としては、このような家を片付けるほうが一般的な家を片付けるよりも3倍値段が高いんです」
それから、私は兄貴のプライベートなことも聞いた。彼は結婚したことがあるが、その後また離婚した。妻は彼が去った後、彼らの息子を産んだ。息子は今では家庭があり、男の子と女の子がいる。兄貴は孫息子や孫娘をかわいがっていて、会うたびにお年玉を渡している。
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