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スキージャンプ髙梨沙羅と行くパラオ、気候変動危機の最前線に迫る【大統領インタビューも実現】

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月11日 11時30分

髙梨さん 太平洋の島国であるパラオは気候変動の影響を特に受けやすいのかなと思いました。具体的にどのような影響が生じていますか?

ウィップス大統領 直接的な影響として、暴風雨と高潮が挙げられます。以前は来なかった大型台風で学校や家屋が破壊されており、高潮でもパラオの東海岸全体が被害を受けました。また、海面上昇によって、タロイモの生育地(湿地帯)に海水が入って塩害が生じています。さらに海水温上昇の影響で、クラゲと一緒に泳ぐことができる「ジェリーフィッシュレイク」のクラゲの数も減っています。

私たちは主要産業である観光に依存しており、また主食であるタロイモにも依存しています。嵐や高潮で破壊されるたびに再建しなければならないとなると、私たちの生活は後退してしまいます。

髙梨さん 聞くのも辛いお話です。パラオにとって脱炭素が重要な理由を改めて教えてください。

ウィップス大統領 私はいくつかのCOP(気候変動枠組条約締約国会議)に出席してきましたが、最初に出席したCOPで「(気候変動を傍観して)我々がゆっくり苦しみながら終わりを迎えるのなら、今終わらせるためにいっそ爆弾を落とせ」という声明を出しました。気候変動の影響は緩慢な「死」のようなものだからです。二酸化炭素の排出量を削減するために、再生可能エネルギーの使用や輸送エネルギーを使用しない地産地消の選択など、誰もが決断し、役割を果たすことが必要です。

髙梨さん 日本の協力はパラオの気候変動対策にどのように役立っていますか?

ウィップス大統領 パラオは2032年までに再エネ比率を100%にすることを目指しています。現在、JICAの協力で導入に向けた調査が進められている海洋温度差発電(OTEC)*は、クリーンで安定したエネルギー源であり、脱炭素化に役立つでしょう。OTECを進めている久米島(沖縄県)から学んだことは、電力だけではなく、海洋深層水を活用した産業の発展も望めるということです。ぜひそれをパラオで実現し、脱炭素化を世界に示したいと思っています。

テスト運行中の路線バスシステムも、人々の車依存を減らし、二酸化炭素の排出量を減らすために有効です。将来的には、電気(EV)バスや水素バスを使用するなど次のステージに進めたいですね。

*海洋温度差発電(OTEC)...表層海水と深層海水の温度差を利用する発電システム。沖縄県久米島で、発電の際に汲み上げた海洋深層水を飲料水や養殖業、農業に活用する実証事業が進められており、電気と共に産業も生み出す「久米島モデル」として注目を集めている。

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