なぜハリスは負けたのか?【米大統領選2024を徹底分析】
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月12日 17時58分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)
<初の女性大統領誕生はまたも実現せず。進歩主義的すぎる主張が労働者階級の支持を遠ざけた? バイデンの撤退が遅すぎた? 女性が敬遠された? 本当の敗因とはなんだったのか>
カマラ・ハリス副大統領が2024年米大統領選でドナルド・トランプ前大統領に敗北した原因は、これから何年にもわたり、あらゆる角度から分析されることだろう。そこで、異例の選挙から日が浅い現時点では、今後のアメリカの政治に影を落としそうな不吉なトレンドを整理しておきたい。
現職の大統領として、民主党の大統領候補指名が内定していたジョー・バイデン大統領が、選挙戦からの撤退とハリスの支持を表明したのは7月21日のこと。その直後、ハリスは目覚ましい選挙戦のスタートを切ったが、最後まで独自のカラーを打ち出すことはできなかった。
これは16年大統領選で、民主党の大統領候補となったヒラリー・クリントン元国務長官が、政治の素人だったトランプに敗北したときと重なる部分がある。当時のヒラリーと同じで、ハリスはトランプが大統領としていかに不適格か訴えることに多くの時間を費やし、なぜ自分のほうが優れているのかについては一貫したメッセージを示せなかった。
9月10日に行われた唯一の大統領候補テレビ討論会でハリスはトランプを圧倒したし、わずか3カ月で10億ドル超という巨額の寄付を集めることにも成功した。それなのにハリスは、経済や移民といった最重要争点で、自分のアジェンダを説得力をもって示すことができなかった。
ハリスは結局開票日には姿を見せず、翌6日に敗北演説を行った。聴衆には涙ぐむ人も多かった(6日) KEVIN MOHATTーREUTERS
これまでとは主張を変えた争点についても、説明が足りなかった。例えば、シェールガスの採掘法であるフラッキング(水圧掘削法)についてハリスは長年、環境破壊を理由に反対の立場を取ってきた。
それが今回容認に転じたのだが、「技術の進歩で環境へのダメージが減ったから」というまっとうな理由を言い添えることはなかった。このためウォール・ストリート・ジャーナル紙の著名コメンテーターから、「下手なペテン師」と呼ばれてしまった。
結局、ハリスは上司であるバイデンとの距離をうまく取ることができなかった。トランプ陣営を取り仕切るジェーソン・ミラー選対本部長は、政治メディア「ポリティコ」のインタビューで、今回の選挙戦のターニングポイントについて語っている。
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