なぜハリスは負けたのか?【米大統領選2024を徹底分析】
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月12日 17時58分
大統領候補として全米のスポットライトを浴び、自分を売り込む時間が3カ月しかなかったことも、ハリスにとっては大きなハンディとなった。これに対してトランプは、ある意味で8年間(大統領としての4年間と、下野してからの4年間)スポットライトを浴び続けてきた。
共和党予備選でフロリダ州のロン・デサンティス知事や、トランプ政権で国連大使を務めたニッキー・ヘイリー元サウスカロライナ州知事ら有力候補を大差で破り、自分はアメリカ史上最高の大統領の1人だったと豪語すれば、(たとえ嘘でも)メディアで大きく報じられた。
国内で激しい物価上昇に直面し、世界を見渡せば2つの戦争が同時進行するなか、コロナ禍前のトランプ政権は平和で経済的にも豊かだったと懐かしがる有権者は少なくなかった。そうやってトランプになびく流れは、ヘイリーのように党内で対立していた政治家さえもトランプの嘘をのみ、支持を表明したことで、一段と強くなっていった。
トランプの暴言や不正行為が、あまりにも次から次へと報じられるため、大衆の感覚が麻痺してきた側面もある。だから合計91件もの罪で起訴され、そのうち34件で有罪評決を受け、大統領としても2回弾劾され、女性をレイプしたことが裁判で認定されても、選挙におけるトランプの優勢は動かなかった。
女性大統領はやっぱり無理?
それどころか、トランプがハリスのことを「低脳」とか「クレイジー・カマラ」とか「コムラード(共産主義者)・カマラ」など、ひどいあだ名で呼んでも、むしろ多くの有権者にはアピールしたようだ。
トランプの発言は嘘だらけだったが、それはファクトチェック以上に、間違った解説や、人をおちょくったミームや、ディープフェイクを爆発的に増加させた。
トランプは「憎悪に満ちた選挙活動」をしているのはハリスだと断言し、21年1月の連邦議会議事堂襲撃事件は「愛の日」だと語り、それが何百万人もの熱狂的な支持者に受け入れられた。
もちろん今回の大統領選でも、ロシアや中国、イランといった国々が偽情報をばらまいた。
しかしその影響工作は以前よりもはるかに巧妙になり、はるかに広く蔓延したため、アメリカのテック企業は取り締まりを諦め、自社が運営するプラットフォームがこうした工作の温床となることを許してしまった。それはトランプが権力の座に返り咲く絶好の環境をつくった。
一方、ハリス陣営は政治環境の変化をきちんと理解していなかった。ジャーナリストのファリード・ザカリアが10月にワシントン・ポスト紙で指摘したように、「世界最強の経済」は、バイデンとハリスに「良い結果をもたらしていない」。
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