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なぜハリスは負けたのか?【米大統領選2024を徹底分析】

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月12日 17時58分

ミラーに言わせると、それは10月8日、ハリスがABCの朝の情報番組『ザ・ビュー』に出演したときだ。女性5人が共同で司会兼コメンテーターを務めるバラエティー色の強い番組だから、ハリスはかなりリラックスして出演できたはずだ。

ところが、司会者の1人であるサニー・ホスティンから、この4年間に、自分が大統領だったらバイデンとは異なる措置を取っていたと思うことがあるかと質問されたとき、ハリスは「何一つ思い当たらない」と答えた。ハリスの側近たちが愕然としたのは間違いない。

トランプの支持者たちは「これで勝った」と大いに盛り上がったという。

ハリスの敗北演説を聴く聴衆たち(6日) EVELYN HOCKSTEINーREUTERS

バイデンとの決別を示せず

ハリスはその後、ダメージの修復を試みた。CNNのインタビューでは、「(私の政権は)バイデン政権の続きにはならない」と語った。だが、既に手遅れだった。「よりによって(黒人で民主党寄りの)ホスティンが、ハリスの大統領候補としての息の根を止めるとはね」と、ミラーは語っている。

むしろハリスは、一貫して支持率が低いバイデンとの決別を打ち出さなければならなかった。なにしろ有権者の3分の2以上が「アメリカは間違った方向に進んでいる」と考えていたのだ。

バイデン本人と民主党指導部は、巨額のインフラ投資法や歴史的な気候変動対策、そして半導体業界を支援する「CHIPSおよび科学法」などの大型法案を成立させてきた実績から、バイデンの再選は確実だと思い込んでいた。

81歳という高齢や認知能力への不安がささやかれても、バイデンが撤退を拒否し続けた理由の1つは、いずれ有権者は自分がいかに実務能力に優れた大統領か気付くだろうと確信していたからだ。

実際、経済指標は良くなる一方のように見えた。ほぼ全てのエコノミストが驚いたことに、バイデン政権下で、アメリカは景気後退を回避した。これはジェローム・パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長の手腕によるところが大きいが、23年の春から夏にかけて、物価上昇のペースも鈍化し始めた。

それでもバイデンの支持率が、40%周辺を突き破ることはなかった。党内の圧力を受けて、ハリスに大統領候補のバトンを渡した後もそうだった。

GDPや雇用統計は好調でも、物価上昇は依然として人々の暮らしに重くのしかかり、バイデン政権に対する評価はマイナスのままだった。それは副大統領であるハリスの選挙戦を最後まで厳しいものにした。

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