バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...今後を占う「6つのポイント」
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月21日 15時4分
感情的で衝動的、時に暴言も吐くマッデンを、「サマーオールは完璧な実況で補佐していた」という。このコンビによる中継は22年も続いた。荒馬マッデンを御する術を心得たサマーオールが、あくまでも黒子に徹したおかげだ。
娘のワイルズも同じ資質を持っている。トランプが米政治史上最高の復活を果たし、家族からイーロン・マスクに至るまでの面々を勝利宣言の舞台に呼んだとき、トランプはワイルズにも登壇して脚光を浴び、一言述べるように求めたのだが、ワイルズは前に出てきただけで発言はしなかった。
彼女はトランプに「アイス・レディー(氷の淑女)」と呼ばれている。トランプは常に、自分が宇宙の中心でないと気が済まない。だからワイルズのように控えめな人物が重用される。そんな彼女が大統領の首席補佐官(実権は副大統領よりもある)となる。女性としては史上初だ。
ある識者はこう指摘する。「見る者が見れば、政界の行事に彼女が影響を及ぼしていることは明白だが目には見えない」。そう、わずかな痕跡が見える程度でいい。公の場で、たいていは後ろに控えている。本人が公式発言をすることはまずない。自分自身についてはもっと語らない。
トランプの最大の弱点は自分自身を御せないこと。しばしば子供じみたことをし、平気で暴言・放言も吐く。そんな男の選挙戦をワイルズは仕切ってきた。ただし国政の運営は選挙戦とは違う。彼女のマジックがホワイトハウスでも効くかどうか。効かなかったら、最悪だ。
2. 口先勝負か政策勝負か?
選挙が終わってすぐ、私はシュールな機会を得た。連邦議会主催のプログラムで、ウクライナの政治代表団と面談したのだ。ロシアとの戦争で血を流しているウクライナ人にとって、トランプの勝利は最悪の事態だと思っていた私は、葬式のような雰囲気を覚悟していた。
しかし違った。彼らは明るく自信に満ちていて、私は啞然とした。
ウクライナ人は、熱烈なトランプ支持者並みのトランプ礼賛を口にした。いわく、ウクライナの領土が奪われたのはトランプ時代ではなく、オバマとバイデンの時代だった。
トランプは最初の4年間で、オバマと(ロシアの侵攻以前の)バイデンを合わせたよりも多くの殺傷兵器をウクライナに供与してくれた......。
国務長官にマルコ・ルビオ上院議員、CIA長官にジョン・ラトクリフ元国家情報長官という今の共和党で考えられる限りの妥当な人物を指名したトランプの選択は、「プーチンに味方する」という選挙中の発言よりも現実的な政策を優先した結果と言える。
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