バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...今後を占う「6つのポイント」
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月21日 15時4分
だがピート・ヘグセスを国防長官に、タルシー・ガバード下院議員を国家情報長官に、マット・ゲーツ下院議員を司法長官に、ロバート・ケネディJr.を保健福祉長官に起用したトランプの人選は荒唐無稽で冗談としか思えない。
ヘグセスは単なるテレビ司会者で、行政の知識や経験はなく、ハイレベルの軍を指揮したこともない。元民主党員のガバードはロシアのスパイと関係があり、アメリカの敵対国の言い分とそっくりな主張をしてきた。彼女に情報機関の調整を委ねるなんて、まるでバラエティー番組だ。
買春疑惑で司法省の捜査対象となったゲーツを司法省のトップに据えるのは、これまた背筋が凍る話。反ワクチン派のケネディに医療行政を委ねるのも恐怖の茶番だ。
政界通のある人物に言わせると、トランプには最大の支持者に恩返しをする必要があり、選挙戦中の途方もない約束を一部なりと実現してやることで、熱烈なMAGA派の有権者を納得させたいのだろう。
連邦議会の上院がこんなばかげた閣僚人事を承認しないことは、トランプも承知の上だ。しかし、これで自分に対する共和党上院議員の忠誠心を試すことはできる。
「MAGA派を喜ばせ、党派の壁を越えてきたガバードやケネディのような仲間に感謝の意を表し、議会共和党の忠誠心を測り、リベラル派を沈没させ、党内エリートを震え上がらせることになるから、トランプにとっては一石二鳥、三鳥だ。実際の政策は、従来の共和党路線と大差ないものになるだろう」と推測する政治コンサルタントもいた。
しかし今のトランプは共和党を完全に支配している。そうであれば、こうしたとっぴな人選の脅威を過小評価するのは禁物だ。
あるコメンテーターは、ゲーツを司法長官に指名するのはロシアのウラジーミル・プーチン大統領を国防長官に起用するのと同じくらい滑稽だと指摘した。そのとおりだが、それが現実。今の共和党なら、カマラ・ハリスよりもプーチンを選ぶに決まっている。
3. 「プロジェクト2025」は?
2025年の政権奪還を見据えて保守派のシンクタンク「ヘリテージ財団」がまとめた膨大な政策提言が「プロジェクト2025」。大統領権限を大幅に拡大し、人工妊娠中絶の禁止など超保守的な社会政策を推進すると明記した文書で、当然のことながら過半数を超える国民には受け入れ難い内容だ。
だから民主党は選挙戦で、トランプが勝てば「プロジェクト2025」が実行されると叫び、有権者の不安をあおった。しかしトランプは本能的に空気を読み取り、自分は「プロジェクト2025」など知らず、読んでもいないと言い張った。
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