トランプを勝たせたアメリカは馬鹿でも人種差別主義でもない
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月27日 18時41分
政党は、大衆のほうから自分たちのところにやって来てくれることを期待するべきではなく、自分たちが有権者のほうへ歩み寄る道を探さなければならない。民主主義制度のさまざまな良いところまで疑問視するのなら別だが、そうでないなら、間違った政党を選択した有権者を責めるわけにはいかない。
イギリスの労働党は、まさに長年、このパターンだった。自分たちのほうが優れているかのように振る舞い、何を求めるべきかを人々に指図し、自分たちが政権政党に選ばれないときには侮辱的だと感じていた。
内紛は労働党の歴史の大きな部分を占めており、それは通常、イデオロギー的にまぎれもない左翼運動を望む人々と、選挙で勝つためにそれを和らげたい人々との間の戦いに要約される。現首相のキア・スターマーと元首相のトニー・ブレアは後者のタイプで、労働党元党首のマイケル・フットとジェレミー・コービン(党を選挙での敗北に導いた)を賞賛するような前者のタイプからはひどく嫌われている。
ハリスは、そのどちらのカテゴリーにもうまくなじまなかったと思う。過去には、彼女は確かに、刑務所内の受刑者が性別を変更する権利を支持するなど、有権者がいわゆる「woke(目覚めた、意識高い系)の狂気」と呼ぶものの典型ともいえそうな立場を何度か示してきた。でも、選挙遊説ではそのような急進主義は示さなかった。ある意味、それは問題にはならなかった。
「文化戦争」においては、民主党が一方の側に、共和党が他方の側にいるとみなされるもの。民主党は、「インターセクショナリティ(交差性、人種や性的指向などへの差別を個別の問題ではなく複合的な問題と捉えること)」、「批判的人種理論(人種差別は制度的に組み込まれているとする考え方)」、「白人特権は存在する」、「トランスセクシュアルの権利」といった、非常に疑わしい論理的根拠に欠ける理論を擁護する人々に共感していると思われている。
端的に言えば、これらは平均的なアメリカ人が強く拒絶する考え方だ。
彼らは、オレゴン州ポートランドで起きたように、小さなタコス料理店が、メキシコ人ではなくて白人が経営しているからという理由でネット炎上し、廃業に追い込まれた、といった事例を望まないのだ。なんとまあ大変、「文化の盗用」の罪ではないか!というわけだ。
トランプは、自身の数々の欠点にもかかわらず、こうした問題に関しては多数派の有権者の感覚に同調することで有利に立った。
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