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ホームレスは助け合うのか、それとも冷淡で孤独なのか...不思議な「兄弟分」の物語

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月27日 18時45分

彼ら2人はただの隣人ではなく、兄弟のように仲がいいのだとすぐに分かった。さもなければ、桂さんはこのような提案をしなかっただろう。

また、その年の冬が始まる前のある日、買っておいた冬用の肌着を2着持って荒川の河川敷を訪ねたときには、こんなこともあった。

最初に桂さんに会い、その肌着を手渡す。すると、すぐには受け取ってもらえず、「斉藤さんの分はありますか」と聞かれた。

「はい、1人1個ずつ」と答えると、桂さんは言った。

「それはよかった。彼もきっと喜ぶでしょう」

その時、斉藤さんは家にいなかったので、肌着は桂さんに託し、後で渡してもらうことにした。

喜びを共有するほか、彼らは風雨を、そして危険を共にする。

8月のある日、私が息子を連れて荒川へ景色を撮りに行ったときのことだ。桂さんと斉藤さんの家の近くに行き、何をしているのか覗いてみたいと思った。

斉藤さんのテントハウスの前に行くと、桂さんが眉をひそめて斉藤さんのテントのそばにしゃがんで石を縛っていた。

翌日に台風8号の接近が予想されていた。テントハウスが吹き飛ばされるのを防ぐためには、重い石でテントを安定させる必要があった。

桂さんの友人に対するこのような心配りを見て、私は粛然としたのである。台風が来て斉藤さんの安全が本当に脅かされたら、桂さんは全力を尽くして兄弟を救助するに違いないと確信した。

斉藤さんが暮らしていたのは桂さんが建ててくれたテントハウス(左)/台風が襲来する前に、桂さんが斉藤さんのテントハウスを補強作業中(右)

非対称な関係? 斉藤さんのために尽くす桂さん

桂さんは斉藤さんのために無償で作業をすることが多いが、きちんと勘定をする場合もある。

例えば、彼らに会いに行ったとき、桂さんだけがテントにいた日があった。

桂さんは言った。

「斉藤さんの自転車が昨日パンクしたので、彼は自転車を私の所に置いて、今日、私の自転車に乗って競馬場に行きました。自転車を修理しましたが、彼はまだ帰っていません」

曹操の話をすれば、曹操が到着する(日本語で言えば「噂をすれば影」)。堤防の向こうから斉藤さんが自転車でやってくるのが見えた。

斉藤さんに会い、今日の競馬の運はどうだったかと聞くと、午後4時になったら結果が分かるという。その時、彼は家に座ってビールを飲みながらラジオで放送される競馬の結果を楽しみにするのだ。

斉藤さんの独りよがりな表情を見て、桂さんは文句を言った。

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