数年後に迫る!?「ロシアとの戦争」に備えるヨーロッパ
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月5日 20時51分
ロシア軍の侵攻を阻み撃退するために築く防衛施設「イースト・シールド(東の盾)」で、「竜の歯」を背に記者会見するポーランドのトゥスク首相(11月30日)Photo by Aleksander Kalka/NurPhoto
エリー・クック
<ウクライナ戦争でロシアの敗戦が見込めなくなり、NATO諸国では、数年後に迫っているかもしれないロシアとの戦争に対する備えが静かに始まっている>
ロシアとの戦争が数年先に迫っているかもしれない、という警戒感が欧州に広がっている。NATO諸国は、ロシアが同盟国の領土に足を踏み入れたときに即応できるよう防衛の基礎固めを始めている。
【写真】国境にずらり並んだ「竜の歯」「ハリネズミ」...バルト三国で、ロシア「侵攻」への警戒感が急速に高まる
「ロシアは西側諸国との戦争を準備をしている」と、ドイツ連邦情報局のブルーノ・カール長官は11月下旬に語った。
ただし、NATO圏内に大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性は低い、とカールは言う。限定的な侵攻か、サイバー攻撃などの謀略と軍事作戦を組み合わせたハイブリッド戦争を仕掛けてくる可能性が高いと言う。
NATOは、ロシアとの全面的な戦争と、NATO加盟国の安定を損なうことを目的とする密かな工作が行われる場合と両方のシナリオに備えようとしている。
「ロシアがNATOの結束力を試すには、限定的な領土の強奪を含め、複数の選択肢がある」と、ポーランド北西部を拠点とするNATOの多国籍軍北東部の元責任者、ユルゲン=ヨアヒム・フォン・サンドラートは言う。
その緊急性は、軍や政府高官の目から見ても明らかだ。欧州委員会のアンドリウス・クビリウス防衛担当議員(リトアニア)は9月、各国国防相とNATO司令官は「ロシア大統領のウラジーミル・プーチンは6~8年以内にNATOやEUと対決する準備を整える可能性があるという点で見解が一致している」と述べた。
エストニアの対外情報機関は今年2月、ロシアが軍の建て直しに成功すれば、NATOは「今後10年のうちに赤軍スタイルの大規模軍隊と対峙することになる可能性がある」と警告した。
この軍隊は、電子戦や長距離攻撃以外の分野ではNATO軍より『技術的には劣る』が、軍事的潜在力は大きい」と、同局は指摘した。
「こうした評価を真摯に受け止めれば、適切に準備するべき時がきたということがわかる。そして残された時間は短い」と、リトアニアの元首相でもあるクビリウスは、ロイター通信に語った。「すぐにも思い切った決断を下さなければならない」
警戒のきっかけは、なんといってもロシアによるウクライナへの本格侵攻だった。スウェーデンとフィンランドは、長年の非同盟政策を放棄してNATOに加盟した。西側の支援でウクライナがロシアを撃退できればまだしも、ロシアが新たにウクライナの領土を手にいれる可能性も強くなってきた。
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