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尹錫悦は「何を間違えた」のか?...お粗末すぎた大統領の自作自演クーデター計画を解説

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月10日 13時51分

12月3日深夜に戒厳令を宣言した尹大統領 THE PRESIDENTIAL OFFICEーHANDOUTーREUTERS

ネーサン・パク(米「責任ある外交に関するクインシー研究所」研究員)
<深夜の戒厳令を食い止めたのは、独裁政治を経て勝ち取った韓国民主主義の底力>

まさか、まさかの一夜だった。確かに野党議員の金民錫(キム・ミンソク)はこの夏から、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が戒厳令を出しかねないと警告していた。しかし誰もが、さすがにそれはないと思っていたし、そう思いたかった。

【年表で振り返る】戒厳令とクーデター続きの韓国現代史

もちろん、あの頃から右派で少数与党の尹政権が強権的な傾向を強めていたのは事実。彼の支持率は10%台後半から20%台前半に低迷し、大統領夫妻の不正疑惑も深まるばかりだった。

それで尹はリベラル派の政治家やジャーナリストの事務所や自宅を片っ端から捜索させ、ろくな根拠もないのに野党指導者・李在明(イ・ジェミョン)を刑事告発した。過去の遺物のような軍事パレードもやってみせた。

それでも尹が戒厳令を敷いて自作自演のクーデターをやり、民主的に選ばれた現職大統領が独裁者に変身するなどという金民錫の主張はあまりにも荒唐無稽と思われていた。

金は1987年に全斗煥(チョン・ドゥファン)軍事独裁政権を終わらせた民主化運動の元リーダーだが、それにしても党派色むき出しの発言だと、みんな眉をひそめていた。87年の民主化以降に韓国で戒厳令が敷かれたことは一度もない。

ただし、北朝鮮との軍事衝突で戦時の非常事態となれば戒厳令を出せるという法律は残っていた。

議事堂への突入を試みる兵士たちを抗議の市民が押し返した CHUNG SUNG-JUN/GETTY IMAGES

その戒厳令が急に現実となった。12月3日の午後10時23分、尹は予告なしの記者会見を開いた。6分間にわたって声明を読み上げ、「非常戒厳」を宣布すると表明した。

理由はリベラル派の野党「共に民主党」が政権幹部に対して22件もの弾劾訴追案を発議し、来年度予算を大幅に削減すると脅し、国会を「自由民主主義体制を破壊する怪物」に変えたというものだった。

尹は政敵を「親北朝鮮の反国家勢力」と決め付けた。それは韓国の過去の独裁者たちが自らを正当化するために使ったのと同じ表現だった。

1時間後には朴安洙(パク・アンス)陸軍参謀総長が戒厳司令官に任命されていた。戒厳司令部は国会と地方議会に一切の政治活動を禁じ、全ての言論と出版を統制し、市民の集会を禁じると命じた。首都ソウル市内には装甲車やヘリコプターが出現した。

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