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尹錫悦は「何を間違えた」のか?...お粗末すぎた大統領の自作自演クーデター計画を解説

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月10日 13時51分

とはいえ、一歩間違えば大混乱と血の海になりかねない場面も多々あった。法律上、国会は多数決で戒厳令を解除することができるが、そのためには議員が集まって投票できる環境が必要だった。

しかし超法規的な戒厳令の発動によって国会は閉鎖され、武装した兵士が議事堂の外をパトロールし、機関銃を備えたヘリコプターが上空を旋回していた。

それでも韓国の議員たちはやり遂げた。議事堂周辺に集まった市民は配備された特殊部隊ともみ合い、兵士や装甲車を止め、議員たちが建物に入る道を開いた。

共に民主党の女性政治家・安貴朎(アン・グィリョン)は、武装した兵士を素手で押しのけて議事堂に入った。党首の李在明は59歳にしては驚くべき運動能力を見せ、兵士たちを避けるために議事堂の壁を乗り越えた。幸いにして、誰も彼に発砲しなかった。

建物に入った議員とスタッフたちは入り口にバリケードを築き、午前0時49分に開会が宣言された。議長の禹元植(ウ・ウォンシク)は、全ての法的な手続きを踏み、投票結果に疑問の余地が残らないようにしようと強調した。

その間にも空挺部隊が窓ガラスを割って侵入を試みたが、議会スタッフが消火器や携帯電話のフラッシュで応戦し、どうにか押しとどめた。

国会の手続きにのっとって法案をタイプし、提出するのに12分かかった。しかし午前1時1分、300人の国会議員のうち、なんとか議場に入ることのできた190人が全員一致で戒厳令の解除を決議した。

なかには与党・国民の力に属する議員18人も含まれていた。しばらくためらった後、ヘリコプターと装甲車、そして兵士たちは議事堂を離れ始めた。

しかし、尹大統領が国会決議に従う保証はなかった。だから議員たちは議場にとどまり、尹が再び軍を出動させたり、新たな戒厳令を発したりする事態に備えた。

敗北を認め、屈辱にまみれた尹が記者会見に臨み、戒厳令解除を発表したのは午前4時27分だった。

保守勢力には「恥の上塗り」

現時点では、状況はまだ流動的だ。しかし尹大統領が27年までの任期を務め上げる可能性は低い。野党は尹の即刻辞任を求めたが、応じないとみて弾劾の手続きに入った。

弾劾には議会(定員300)の3分の2以上の賛成が必要だ。尹の与党は108人の議員を擁し、3分の1をわずかに上回っている。建前上、与党が大統領を支持するのは間違いない。しかし18人の議員が既に戒厳令解除に賛成票を投じている。弾劾決議でも8人以上の造反者が出る可能性は高い。

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