トランプ「反・気候変動」時代到来で思い出すべき、京都議定書での日本の過ち──蟹江憲史教授
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月27日 15時15分
森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)
<トランプ政権は世界の環境問題をどう「引っかき回す」のか。ネガティブな予測がなされているが、日本のSDGsの第一人者である蟹江憲史・慶應義塾大学大学院教授は「日本にとってチャンスでもある」と言う>
ドナルド・トランプの米大統領選当選に、アメリカのワシントンD.C.に住んでいる研究者仲間は「お通夜状態だった」と、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授は言う。世界経済だけでなく、世界の環境問題も、トランプが「引っかき回す」ことが予想されている。
気候変動の問題は、そしてSDGs(持続可能な開発目標)の行く末は、これからどうなるのか――。研究と実践の両面で環境問題やSDGsを中心に活躍する蟹江さんに、11月、インタビューを行った。
日本政府のSDGs推進円卓会議構成員なども務め、4年に1度、国連事務総長の任命を受けた世界の独立科学者15人のうちの1人として「持続可能な開発に関するグローバルレポート(Global Sustainable Development Report)」も執筆する蟹江さんは、国内外の情勢に詳しい。
ニューズウィーク日本版では2023年に、「日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく――」という考えのもと、「SDGsアワード」を立ち上げた。2023年、そして2024年と、蟹江さんには本アワードの外部審査員を務めていただいている。
インタビューを、前後編に分けて掲載する(この記事は前編)。
※インタビュー後編:日本のSDGsは「動いていない」...蟹江憲史教授の苛立ちと、未来に向けたボトムアップの取り組み
――2025年1月、アメリカでトランプ政権が発足する。11月の当選以来、環境分野に関してもさまざまな予測がなされてきた。産業革命前と比べて世界の平均気温上昇を2度以内に抑えることを目標とする「パリ協定」から離脱するだろうとも言われるが。
SDGsの研究と実践の両立を図ってきた慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授(2023年撮影) Photo:遠藤 宏
蟹江 本当にパリ協定から離脱することがアメリカの利益になるのか。そこは(トランプ次期大統領も)考えるのではないか。そして絶対に、アメリカの利益にならないと思う。
離脱してしまうと、カーボンマーケット(CO2排出削減量を取引する市場)から資金拠出、貿易まで、パリ協定の下でのルールメイキングに参加できなくなる。そうすると、4年間は石油を掘りまくって生き延びるかもしれないが、(次期政権の終わる)4年後にふたを開けたとき、アメリカに不利な状況になっているだろう。
この記事に関連するニュース
-
日本のSDGsは「動いていない」...蟹江憲史教授の苛立ちと、未来に向けたボトムアップの取り組み
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月28日 8時10分
-
トランプ再登場に身構えるキューバ、ブラジル、ベネズエラ 【2025年を占う!】中南米
Japan In-depth / 2024年12月26日 21時0分
-
日本は大幅な削減目標を 米離脱も脱炭素の流れ進む
共同通信 / 2024年12月20日 19時59分
-
温室ガス、35年に61%以上減 米政権の目標、交代で無効に
共同通信 / 2024年12月19日 21時36分
-
政府代表団、COP29の会期途中に引き揚げ(アルゼンチン)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月29日 15時35分
ランキング
-
1【速報】韓国・務安空港で済州航空機が壁に衝突し爆発 28人死亡
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年12月29日 9時59分
-
2イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ北部の病院に突入 院長や医療スタッフを拘束、病院は攻撃による火災で機能停止
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年12月29日 8時21分
-
3尹大統領が出頭要請3度目の拒否…韓国では3回応じないと逮捕状請求が一般的、現職逮捕されれば初
読売新聞 / 2024年12月29日 11時33分
-
4「親子2代50年以上の支配の終焉」国際テロ情勢の観点からアサド政権崩壊を考える
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月29日 8時9分
-
5旅客機が着陸失敗・炎上…62人の死亡確認 韓国南部・務安
日テレNEWS NNN / 2024年12月29日 12時28分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください