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生活保護はホームレスを幸せにするか、それを望んでいるのか...福祉国家・日本の現実

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月28日 15時50分

私が調べたところ、一般的に独身アパートへの入居申請の手続きは、煩雑で、しかも厳しい基準があるようだ。職歴、カルテ、居住履歴などを含む多くの証明書を提供するほか、一人暮らしの能力があるかどうかの審査を受けなければならない。

1つは健康管理。つまり、栄養バランスを考えて食事を取れるか、生活は規則的か、病気の時に自分で生活できるか。もう1つはお金の管理だ。つまり、自分のお金をきちんと管理できるか。

ほかに、ガスストーブなどを正しく使用できるかという安全管理、料理や掃除、洗濯、入浴を自分でできるかという自己管理もある。他の人とコミュニケーションを取れるか、迷惑をかけないようにできるかどうかなども確認されるという。

どうしてこんなに条件が多いのかと疑問に思う人もいるかもしれない。だが確かに、よく考えてみれば、これらの条件を満たせなければ厄介なトラブルが発生するかもしれないのだ。

ホームレスと憲法「基本的人権の尊重」

世界中のほとんどの国に、多かれ少なかれ貧困人口が存在している。彼らは政府の救済を必要としている。

ホームレスは貧困人口のごく一部だが、政府の救済を受けない人が多い。自分の働きで生活を維持している。

確かに日本では、ホームレスが公園や橋の下や通りなどの公共の土地にテントを張ったり、住民がごみ集積場に置いた飲み物のアルミ缶を持ち去ったりしていることは、法律や条例に違反する行為であることを否定できない。

ならば、なぜ政府はその違法行為を徹底的・強制的な手段で取り締まらないのか。

それは、日本国憲法があるからだろう。日本の行政は憲法の「基本的人権の尊重」を最も重視しており、法律もその原則を破らないように作られている。

最近、大阪などでホームレス・路上生活者を排除する動きがあるが、排除される人たちの暮らしをどう支えていくのか。行政や地域が一体となってその対策を講じるべきだと思う。

ノーベル文学賞を受賞したロシアの詩人ヨシフ・ブロツキーは若い頃、逮捕され、「寄生虫」の罪に問われて流刑に処された。彼は定職に就かず、アルバイトで生計を立てていた。

かつて中国の大都市には、乞食をして定住所のないホームレスがたくさんいた。そしてここ数年、彼らは突然蒸発した。その中には、政府に収監され故郷に送還された人や、悪質な犯罪組織にさらわれたり騙されて臓器の「ドナー」にさせられたホームレスもいる。

北朝鮮に行ったことのある人によると、そこではホームレスの姿を見ることはないという。平壌だけでなく開城、元山などの地方都市でも見なかったそうだ。

もし日本でホームレスの姿を見ることがなくなったら、それはどんな意味を持つか。日本はどんな国になるのだろうか。

(編集協力:中川弘子)

[筆者]
趙海成(チャオ・ハイチェン)
1982年に北京対外貿易学院(現在の対外経済貿易大学)日本語学科を卒業。1985年に来日し、日本大学芸術学部でテレビ理論を専攻。1988年には日本初の在日中国人向け中国語新聞「留学生新聞」の創刊に携わり、初代編集長を10年間務めた。現在はフリーのライター/カメラマンとして活躍している。著書に『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(CCCメディアハウス)、『私たちはこうしてゼロから挑戦した──在日中国人14人の成功物語』(アルファベータブックス)などがある。

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