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「親子2代50年以上の支配の終焉」国際テロ情勢の観点からアサド政権崩壊を考える

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月29日 8時9分

バグダディはイラク・イスラム国のシリア版をアルヌスラと捉え、双方が合併した組織として「イラクとレバントのイスラム国(ISIL)」などを自発的に名乗り、それを広報活動などで強調していたが、ジャウラニはそれを拒否し、アルヌスラ単体で活動を継続していく姿勢を貫いた。

また、ジャウラニは2013年4月にアルカイダの指導者アイマン・ザワヒリへ忠誠を誓い、正式にアルカイダ系統の組織になったものの、2016年7月にアルカイダから脱退した。その後、アルヌスラは複数の関連組織と合併し、2017年1月にシャーム解放機構が結成され、2024年12月に悲願だったアサド政権の崩壊を実現したのである。

ジャウラニが後にイスラム国の指導者となるバグダディと距離を置き、アルカイダと決別したのは、アルカイダという世界的に知名度のある負のブランドが、アサド政権の打倒という目標を達成する上で負担に感じたからだろう。

アルカイダ系ということで地元の市民や反政府勢力との関係が上手くいかなくなるのは、目標を達成する上でジャウラニにとっても得策ではなく、米国など外部勢力から不必要な空爆を受けるリスクも高まる。

ジャウラニは、今後のシリアを運営するにあたって穏健路線を強調し、シリアの復興と成長を進めていく上で諸外国との関係を重視するような姿勢を示している。

シリア解放機構でジャウラニがローカルな目標に専念し、いわゆるグローバルジハード路線とは距離を置き始めたことは、アルカイダ路線を継承するメンバーらが2018年2月、シャーム解放機構からフッラース・アル・ディーンと呼ばれる分派組織を結成し、シャーム解放機構と対立し始めたことからも明らかだろう。

国際テロ研究の領域でも、アルカイダのネットワークはアフガニスタンのアルカイダ本体を中心に、アフガニスタンの「インド亜大陸のアルカイダ(AQIS)」、イエメンの「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」、北アフリカ・アルジェリアなどの「マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」、ソマリアの「アル・シャバーブ(Al-Shabaab)」、マリなどサハラ地域の「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」、シリアの「フッラース・アル・ディーン(HAD)」などと描かれ、シリア解放機構がその中で分類されることはないに等しい。

このように考えれば、今回のアサド政権の崩壊が国際テロ情勢を大きく変化させることは現時点では考えにくい。

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