1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

「苦しみは比べられない」シリアから逃れてきた若者に日本の同世代はどう見えているのか?

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月10日 11時30分

大井 10年、20年、30年、そして避難先で子どもが生まれて2世代、3世代となる難民もいます。シリアからの難民が最も多く、ベネズエラ、ウクライナ、アフガニスタン、パレスチナといった国が続きます。この10年ほどで、難民の数はどんどん増えています。

伊藤 増えている原因は。

大井 現在もたくさんの紛争が起きていて、増え続ける難民の数に対して、紛争が解決して故郷に帰ることができる人の数は圧倒的に少ない状況です。2023年、世界の紛争の数は59件に上りました。また、難民の受け入れ国は約7割が低中所得国。もともと経済的に豊かではなかった国に大勢の難民が入ってきて、住民との間に軋轢が生まれることがあります。JICAでは難民の支援はもちろん、受け入れ国の負担軽減、もともと住んでいた住民の生活改善にも力を入れています。例えば、アフリカで最も多くの難民を受け入れているウガンダでは、難民と住民の両方に米作りの研修を行ってきました。

JICAの米作りの研修を受けたウガンダ難民居住区の農民たち

紛争によって失われる社会とのつながり

世良 そもそもなぜ紛争は起こるのですか。

大井 例えば、社会の中での不平等や差別、貧困、政府の機能不全、政府や行政への不満、武装グループの影響などが原因に挙げられます。紛争によって若者が教育や仕事の機会、家族や社会とのつながりも失ってしまう。こうした点はサンカクシャさんの関わる日本の若者とも共通するのではないでしょうか。

早川 そうですね。日本国内で若者が孤立する背景は虐待、貧困などさまざまですが、それらは幼少期の体験や教育、立ち直りの機会を奪います。結果的にしっかりとした情報にアクセスできないために、SNSを通じて貧困ビジネスなどにつながってしまうこともあります。

大井 そうした状況が紛争地の若者にも起きています。例えばJICAが支援している西アフリカのサヘル地域でも、仕事やお金のない若者が武装グループに入ってしまうことがあります。

世良 お話を聞いていると世界の難民と日本の若者に共通する部分があるのですね。どうやってそれを終わらせることができるのか、課題ですね。

大井 まさにそれが平和構築の取り組みです。解決するのは非常に難しい問題ですが、社会における不平等や差別、貧困、政府や行政機関に対する不満といった紛争のリスクを減らしていく取り組みが必要です。例えば、アフリカのブルキナファソという国で、紛争で両親を失くしたある青年が、身寄りもなく一時は武装勢力に参加しそうになっていたのですが、JICAが提供する職業訓練に参加し、そこで学んだ技術のおかげで仕事と収入を得て、住民とのつながりもでき、社会の中で自立した生活ができるようになったという例があります。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください