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ロシアが本気になれば1000発以上の核弾頭が降ってくる...米国版「アイアンドーム構想」の実像とは

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月22日 19時4分

戦闘機を発射地点の近くの空中で静止させて迎撃する、あるいはドローンやレーザー兵器を同様の位置に配置するという考え方もあるが、これが有効なのは北朝鮮かイランの攻撃に対してだけだろう。

韓国にも、ひそかに開発中の対策がある。北朝鮮に核爆弾やミサイルを使用する兆候があれば彼らの核・ミサイル施設を先制攻撃するなどの「キル・チェーン」と呼ばれる複合的な戦略だ。

韓国はさらに、迎撃のためのミサイル防衛システムと、精密攻撃や特殊部隊を使って北朝鮮の高官や司令部機能を無効化する大規模反撃報復(KMPR)計画を組み合わせている。アルバークに言わせれば、この両者は韓国の剣であり盾だ。

アメリカの政策は「ミサイル発射を未然に防ぐための攻撃手段と重層的ミサイル防衛戦略を組み合わせることで、北朝鮮の長距離ミサイルの脅威に先手を打つ」ことであるべきだとスーファーは書いている。

もう1つの選択肢は、宇宙空間で迎撃ミサイルを発射することだ。これは米国版アイアンドームにとって欠かせないもので、もはや宇宙の「兵器化」は必要不可欠だとスーファーは主張する。

新大統領も同じ考えのようだ。トランプはアリゾナの集会で、「昔のロナルド・レーガンもそれをやりたかったが、当時はまだ技術がなかった」と言った。「しかし今なら、空から針1本でもたたき落とせる」

1980年代に東西冷戦を終結に導いたレーガン大統領は、一方で戦略防衛構想(SDI)を推進した。俗に「スター・ウォーズ」と呼ばれたこの構想には、宇宙空間でソ連(当時)の発射したICBMを迎撃するプランが含まれていた。

宇宙ベースの防衛は不可欠

SM3やGBIのようなシステムは、能力が限定された北朝鮮のICBMの撃墜には十分だろう、とスーファーは言う。だがロシアや中国のICBMの脅威に対処するには、宇宙ベースの迎撃ミサイルが唯一の方法だという。

ロシアが本気でアメリカに攻撃を仕掛けてきたら、アメリカ本土、とりわけ戦略核兵器の所在地に向けて1000発以上の核弾頭が降ってくるだろう。

そうなると、1発ずつ迎撃しつつ反撃用ミサイルの被弾を防ぐという寄せ集め的なアプローチでは間に合わないとスーファーは言う。

だから国防総省は「敵の開発能力を上回るために宇宙センサーやSBI(宇宙ベースの迎撃ミサイル)、指向性エネルギー兵器など物理的破壊を伴わない選択肢、将来の革新的な能力を開発するための投資にもっと重点を置くべきだ」と、報告書にはある。

ただし懐疑的な意見もある。「いったん宇宙空間にシステムを配備し始めたら、もう止まれない」とアルバークは言う。

「ロシアや中国が追随するのは必至だ」

言うまでもなく、ロシアも中国もミサイル迎撃システムの強化に励んでいる。

スーファーの報告書によれば、そうした迎撃システムは「ロシアと中国に非対称的な優位性をもたらす可能性がある。ロシアと中国の国土防空・ミサイル防衛の拡大は特定の状況における軍事バランスに影響を与え、アメリカの数少ない選択肢を混乱させかねない」。

ロシアと中国は早期警戒衛星の開発で協力し、ロシアの防空における優位性と中国の宇宙探査における経験知を融合させている。今は宇宙軍拡競争の真っただ中だ、とアルバークは警告する。

「スタート地点だと思うのは間違いだ」

■イスラエルのアイアンドーム

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