「ホームレスになることが夢だった」日本人男性が、本当にホームレスになった
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月24日 6時30分
商業高校に進学後、退学処分になった
中学卒業後は、商業高校に進学した。その頃の征一郎さんは若気の至りで、いたずらっ子で、遊びに夢中で、学校をサボることは日常茶飯事だった。学校が彼に何度警告しても全く意味がなかった。
通常、学校側はこのような不良少年に対して、保護者に連絡し、自分の子供をよくしつけるよう伝えるのだが、征一郎さんの家庭には事情があった。両親は彼が中学生になる前に離婚し、母親が家を出た後、父親が病気で亡くなったのだ。
彼は家族からのしつけを受けることなく、家庭の温かみに欠けた一人ぼっちの少年だった。
学校側は征一郎さんのような問題を抱えた生徒に手を焼き、出席率が基準を満たしていないこと、過去の試験に不合格であることを理由に退学を勧めるしかなかった。
「僕はやんちゃな高校生だったけれど、大学に進学することを望んでいましたよ。でも高卒認定を得るための試験を受けなければ、大学受験の資格がありませんでした。だから学校に復学を要請し、高校入試も受け直しました。
その後、学校の先生に呼ばれて話をしましたが、その時、僕の大学進学の夢は完全に破れました。先生は僕にこう言ったのです。
『君は今回の試験で合格点を取ったけれど、私は不合格にした。なぜか分かるか。もし君が学校に戻ってくると、君を慕っていた同級生たちがまた君についていくからだ。学校の不良少年の数がまた増える。彼らの未来のためにも、学校の名誉のためにも、もう帰ってこないでくれ!』」
征一郎さんは、先生の話を聞いた後、何の反抗もせず、ただ「分かりました」とだけ言ったそうだ。その後、彼はその母校の高校に戻ることはなく、仲間や友達とも連絡を絶った。
そして、かつての「憧れ」が「宿命」になった
彼には分かっていた。先生の言うことが正しい。間違っているのは自分で、高校生の時は羽目を外しすぎて、自ら進学の道を断ち切ったのだ。
高校中退後は、生きるためにいろいろなアルバイトをやったし、さまざまな苦労を経験した。
征一郎さんは小さい時から肝臓が弱かったという。大人になってからは建築現場の肉体労働が多く、毎日の過酷な労働で疲弊してしまった。その結果、肝臓がますます悪くなり、筋肉痛、頭痛、発熱などが常に生じ、自分の体が支えられなくなって、仕事もできないほどになってしまった。
生きていくために、彼はホームレスになるしかなかった。少年の頃の憧れが、大人になってから、唯一の道になった。
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